2013年10月24日
改革には妥協してはならない「原点」のような存在がある。この「原点」を見失えば、改革はダッチロール現象を起こしてしまう。
今回の消費税の増税の「原点」は二つある。一つは「社会保障・税一体改革」と謳われているように、社会保障を維持・充実させていくための増税だということである。もう一つは「税制抜本改革」と謳われているように、ヴィジョン的税制改革の一環として実施されるということである。
税制改革にはヴィジョン的税制改革と、問題解決型税制改正がある。問題解決型税制改正は現行租税制度のもとで生じている問題を解消していくような税制改正である。
これに対してヴィジョン的税制改革とは、白紙の上に新しい租税制度を描くような「税制抜本改革」である。もちろん、現在の日本で求められている税制改革は、租税制度の基本的フレームワークを改めるヴィジョン的税制改革である。それだからこそ今回も「税制抜本改革」と謳われてきたのである。
ヴィジョン的税制改革が求められているのは、現在が時代の画期だからである。1950年のシャウプ勧告にもとづく税制改革にしろ、1940年の戦時税制改革にしろ、ヴィジョン的税制改革は時代の画期である「危機」の時代に断行される。
「危機」の時代とは一つの時代が終わり、一つの時代が始まる時代の画期である。こうした時代画期には、従来の制度が音を立てて崩れ落ちる。もちろん、租税制度も例外ではない。
もっとも、状況は部分的にしか否定できず、ヴィジョン的税制改革を一挙に実現することには困難がともなう。しかし、実際には部分的税制改革にとどまったとしても、ヴィジョン的税制改革の一環として位置付けられる必要がある。それだからこそ今回の消費税増税も、ヴィジョン的税制改革の一環として位置づけられなければならないのである。
第二次大戦後に挙って福祉国家を目指した先進諸国は、租税制度として所得再分配機能と税収調達機能に優れた所得税・法人税中心税制を定着させていく。しかし、福祉国家が行き詰まり始めると、ポスト・福祉国家の租税制度の形成を巡って、二つの戦略が登場する。一つは
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