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「消費者はバカばかり」という本音と組織の硬直化

永井隆 ジャーナリスト

 「消費者はバカばかり。会社にとって大切なのは、社員だ。CSR(企業の社会的責任)などは意味はないし、環境活動をやるくらいなら社員の給料を上げるべき」

 阪急阪神ホテルズの“食品偽装”よりも、遙かに大きな不祥事を過去にしでかした大手食品メーカーの幹部は、こんな風に語ったことがある。

 最初は冗談かと思ったが、どうやら本音である(次に会った時も彼は同じことを真剣に述べていたので)。建前ではなく本音を開示してくれたことにまずは感謝し、当然ながらここでは個人や所属する企業を秘しておく。

 人が食べるものを扱っている外食や食品メーカー、運送会社、食品小売りは、不祥事など本当はあってはならない。

 だが、阪急阪神ホテルズの外にも、近鉄系ホテルのレストランでもブラックタイガーを車海老と表示していたことが発覚。CSRの代表格と評られていたヤマト運輸でも問題が発生する(実は筆者も、同社を高く評価するレポートを過去に書いた)。中元・歳暮の繁忙期に「クール宅急便」の対応が間に合わず、ハムや冷凍餃子など本来は冷凍・冷蔵が求められる食材で常温のまま仕分け・配達されていたことが明らかになった。

 さらに、老舗百貨店の高島屋は日本橋店などのレストランや食品売り場で販売されたエビやステーキなどで、メニューとは異なる表示があったと発表した。

 “赤信号、みんなで渡れば”ではないのだろうが、 堰を切ったように、消費者を不安に陥れる不祥事が相次いで明るみに出ている。

 企業に不祥事が発生するのは、冒頭の発言にあるように消費者を無視し、自分たち本位になっているためだ。

 「このくらいなら問題ないだろう」、「前からやっていることだから」、「他社さんもやっている」・・・。

 現場の判断基準は、社会の常識ではなく社内の事情で決まっていく。競争が激化し、大きなノルマが課せられると、自分達に好都合な判断は増えていく。さらに、予算達成が未達となると、上司が言い訳するための資料づくりを現場が追わされ、負荷は大きくなる。

 現場にせよ経営層にせよ自分たち本位に陥ると、事実をねじ曲げる行為に結びつきやすくなる。「業界トップを目指すためには」、「時価総額世界一を達成するためには」、「派閥の力を社内で強くさせるためには」・・・。経営計画やノルマと連動したり、会社や部署、あるいは派閥としてのスローガンのようなものと重なり合ったりして ・・・ログインして読む
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筆者

永井隆

永井隆(ながい・たかし) ジャーナリスト

ジャーナリスト。1958年生まれ、群馬県桐生市出身。明治大学卒。1992年、勤務先の新聞社が実質的に経営破たんし、新聞を休刊。これに伴い失業を経験。93年にフリーで独立。新著に「サントリー対キリン」(日本経済新聞出版社)。著書に「人事と出世の方程式」、「国産エコ技術の突破力!」、「ビール最終戦争」、「敗れざるサラリーマンたち」など。

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