2013年11月11日
減反廃止報道と合わせて、減反が廃止できたのは、農協や農林族議員の政治力が落ちたからだという解説がなされている。その根拠として、農協出身の参議院議員が今回の参議院選挙で34万票しか獲得できず、6年前に比べて約10万票も減らしたこと、大物農林族議員が落選して農林族の代替わりが進んだことなどが挙げられている。
果たして、そうなのだろうか?
それが正しいなら、一部新聞の政治部の記者たちは、減反廃止と、農協がTPP反対の一大政治運動を展開し、これが成功していることとの違いを、どのように説明するのだろうか?
農協はたびたびTPP反対の大集会を開催し、1千万人以上の反対署名を集めた。農協は昨年末の衆議院選挙で多数の候補者にTPP反対の公約を行わせ、自民党内のTPP反対議連に、所属国会議員の過半数の議員を集めさせた。
党内の反対を抑えるため、安倍首相はわざわざオバマ大統領と会談し、長期間にわたる米国の日本車に対する関税維持と引き換えに、農産物関税について聖域がありうることを確認しなければならなくなった。車を売ってコメを買ったとでも言おうか?政治的には、日本最大の輸出産業である自動車産業より、農業の方が強いのだ。これで、ようやく日本はTPP交渉への参加を決断することができた。
TPP参加決定後の参議院選挙では、多くの自民党候補者は、農協にコメなどの農産物の関税撤廃反対の約束をして当選してきている。自民党のTPP委員会や衆参両院の農林水産委員会は、重要5品目の関税が維持できなければTPP交渉から脱退も辞さないと決議している。
農業が衰退しているのに、なぜ農協の政治力が増したのだろうか。重要なのは選挙制度の変更である。2人の候補者が競っている小選挙区制では、たとえ1%の票でも相手方に行くと、2%の票差になってしまう。これを挽回するのは容易ではない。
ある衆議院議員は私に、「選挙になると、対立候補に本当に‘殺意’を持ちます。」と語った。これは、嘘いつわりのない言葉だ。農業票にはもはや候補者を当選させる力はない。しかし、小選挙区制の下では、落選させる力は十分持っている。1%でも、逃がしてはならない組織票なのだ。候補者にとって、
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