2013年11月22日
安倍政権が経済界に再三、賃上げを迫っている。賛同する経営者たちもいるにはいるが、これはしょせんは茶番劇にすぎない。
先月、首相官邸で開かれた政府の「政労使会議」。出席した経済界代表らは安倍晋三首相から賃上げを改めて求められた。
この会も3回目。ほかの会合の場でも安倍首相は機会をとらえては、企業の賃上げを求める発言を繰り返している。
会の終了後、出席者のひとり、米倉宏昌経団連会長(住友化学会長)は取り囲んだ記者たちにこう言った。
「経営環境は目に見える形で好転している。『設備投資、賃上げという形で収益を回したい』と経済界の決意をお伝えした」
首相の要請に対して満額回答ともとれる発言だ。
続いて他の会議出席者からも賃上げに前向き発言が続いた。
「従来は賃金体系の維持という方向性だった。それよりもう少し踏み込んだことを考えたい」(川村隆日立製作所会長)
「業績が上がれば、まず税金を払って社会に貢献。そして従業員にも還元する」(豊田章男トヨタ自動車社長)
こうした発言を額面通りに受け取れば、ようやく賃金デフレも終わりの兆しか、と期待したくなる。だが、なぜかこうした動きに違和感も感じる。理にかなった展開ではないからだ。トヨタは日立などの輸出産業は円安で潤っているから、多少の前向き発言をしなければ、とリップサービスしたのかもしれない。
その疑念を裏打ちするような発言が、労働組合から飛び出した。
「我が国は、政府が賃金に介入するような社会主義体制ではない」
自民党や経済界の首脳の発言と間違えそうだが、これはまぎれもなく労組の総本山、連合の古賀伸明会長の発言だ。賃上げムードをいちばん歓迎すべき労組トップが政府による賃上げ圧力をなぜ突き放すのか。
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