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アメリカが黙っていない減反見直し―自動車に報復関税がかけられる可能性も―

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 自民党政府が決定した減反見直しには驚いた。

 1970年から実施されてきた減反政策の基本は、農家が水田でコメを作らないで他の作物を植えるという転作=コメ生産の側から見るとコメの生産が減少するので減反、をすれば、減反面積に対していくらという補助金を交付することで、コメの生産、供給を減らし、コメの価格を高くして、農家の所得を維持するというものだ。これに加えて、2010年から民主党は、国が配分したこれ以上コメを作らないという生産目標数量を守った農家に対して、コメを作付した面積に対していくらという補助金、戸別所得補償を支払うことにした。

 今回の見直しは、後者の部分の、コメの生産目標数量の配分とコメ作付面積に対する戸別所得補償を廃止するというものだ。そのかわり、1970年から続いている本来の減反面積に対する補助金(減反補助金)は、戸別所得補償を廃止したお金を使って、さらに拡充される。つまり、高米価政策という農政の根本に、いささかの変更もない。米価が下がらないので、TPP交渉での関税撤廃などできないし、零細な非効率農家もコメ作を続けるので、主業農家が農地を借り受けて規模を拡大することもできない。

 驚いたのは、減反補助金の拡充だ。

 当たり前だが、コメ農家にとって、最も作りやすい作物はコメである。前回の自民党政権末期の2009年から、作りにくい麦や大豆に代えて、パン用などの米粉や家畜のエサ用などの非主食用にコメを作付させ、これを減反(転作)と見なして、減反補助金を交付してきた。具体的には、農家が米粉・エサ用の生産をした場合でも、主食用にコメを販売した場合の10アール当たりの収入10.5万円と同じ収入を確保できるよう、8万円を交付してきた。安いエサ米などを作っても高い主食用のコメを作ったと同じ農家手取りが確保できるようにしたのである。

 それでも米粉・エサ用の需要先が少ないので、今回補助金を10アール当たりの最大10.5万円にまで増額して、米粉・エサ用の米価をさらに引き下げて需要・生産を増やそうとしている。これは主食用の収入と同額である。もし農家が主食用の収入と同じ収入で満足するなら、農家は米粉・エサ用のコメをタダで販売することができる。実需者は輸送経費等だけを負担すれば、 ・・・続きを読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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