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黒田総裁の「自信」と、「輸出」「消費」失速のギャップ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 黒田日銀総裁が会見で見せる「自信」は本物なのだろうか。それとも国民の「期待」を繋ぎとめるための精一杯の演出なのだろうか。

 総裁はことあるごとに「量的・質的緩和の効果が出てきた。消費も設備投資も今後は堅調な動きが期待できる」と、強気の見通しを述べている。

 現実には、まず日本経済の柱である輸出が伸び悩んでいる。7~9月のGDP(国内総生産、グラフ1)では外需(輸出―輸入)の寄与度はマイナス0.5%で成長の足を引っ張っている。貿易収支の赤字も10月は1兆円を超えた。

 輸出数量(台数や個数)指数の推移(グラフ2)では、2010年を100とすると、現在は91~93あたりだ。為替が円安になった効果で今年3月には一時98.3まで伸びたが、その後は再び鈍化し勢いがない。

 円安になれば、日本から輸出する製品は現地で値下げしやすくなり、価格競争力が増すはずだが、効果はイマイチだ。世界の景気減速や企業の海外進出の影響もあるが、むしろ日本製品の競争力が全体に落ちていることが響いているようだ。とくに中国・アジア市場で日本製の電気機器や輸送用機器の優位性が低下している。

 背景にあるのは、日本のイノベーションの立ち遅れである。「失われた20年」の間に、企業の技術系人材はリストラされ、目先の利益にならない長期的な研究開発は中止された。研究のタネそのものが小粒になった。その間に、中国・韓国はリストラされた日本人技術者を雇って日本に追いつく

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