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[9]アベノミクス1年・・・日本経済の景況は、消費増税に耐え得るか?

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 昨年12月26日に、衆議院議員総選挙での大勝利を経て、第2次安倍内閣が成立してから、来週で1年を迎える。

 安倍内閣の経済政策は、アベノミクスと持ち上げられ、内外の論者には、日本経済の本格的な復活まではやす向きも出て来ている。

 日本経済の景況全般が改善し、具体的には、企業の売上高・利益が増え、雇用環境が改善して賃金も上がれば、経営者・労働者の双方にとって結構なことである。

 では、アベノミクスによる日本経済の景況の拡大とは、具体的な数字では如何なるものだったのか。

 日本経済の景況の拡大を受けて、安倍首相は、今年10月に、来年4月初めからの消費税率を現行の5%から8%に引き上げる政治決断を下した。

 財政当局の立場では、税収に大きな穴が開き、大幅な財政赤字を抱えている状況では、少しでも税収を増大させたいのはやまやまであろう。しかし、税率引き上げの結果、景気が大幅に落ち込めば、意図した税収の増加ではなく、税収の減少さえ起き得るのが、経済政策の運営にまつわる悩ましい点であろう。

 まず、アベノミクスの『成果』を最も包括的に表現している経済数字は、国内総生産(GDP)の規模である。

 日本政府・内閣府・経済社会総合研究所(昔の経済企画庁・経済研究所)では、四半期別の名目国内総生産(GDP、経常価格評価)、実質GDP(2005年基準連鎖価格評価)を推計・公表している。実質GDPは、名目GDPを、価格水準の変化で割り引いたもので、統計上の二次的な産物である。個々の時点の現実の価格・金額で表示した名目GDPが、実際の景気の推移の実感に近いと言えよう。断り書きがなければ、実質GDPの変化率を、『経済成長率』と呼びならわしている。

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 2005年基準のGDPは、1994年第1四半期から2013年第3四半期の期間の四半期別の推計値が公表されている。それをグラフ化したのが上掲グラフである。

 名目GDP(四半期別・年率換算・季節調整済)の水準の推移を見ると、上記の期間では、1997年第4四半期の約524兆円が最高水準であった。最近のピークは、2007年第2四半期の約515兆円であった。2007年後半に米国発の世界的な金融経済危機が勃発し、2008年9月にリーマンショックが起きる前の事であった。

 さて、アベノミクスの成果はと、上掲グラフを眺めると、アベノミクスがスタートした2012年第4四半期の約471兆円から、直近の公式データ期間である今年・2013年第3四半期の約480兆円へと、約9兆円の増加であった。

 ともかくも、増加であったのだから、アベノミクスめでたし、めでたし、なのかもしれない。

 しかし、冷静に上掲グラフを眺めれば、今年第3四半期の水準も、上記の最近のピークであった2007年第2四半期の約515兆円に比べると、約35兆円、約6・9%も下回る。東日本大震災前のピークであった2010年第3四半期の約486兆円にも戻っていない

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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