2013年12月18日
2014年のアジア諸国の実質GDP成長率は、米国経済の回復に支えられて緩やかに改善するとみているが、2006~2010年の平均成長率(6.4%)に比べると伸び率は低位にとどまるだろう。
他の地域に比べて高い成長率を維持してきたアジア諸国であるが、民間部門の負債の増加や不動産価格の上昇など経済の不均衡が多くの国でみられており、銀行にとっての信用リスクが上昇している。今後経済環境が悪化した場合、こうした構造的問題が足かせとなり、景気の下方サイクルが増幅される可能性もある。
アジアの多くの国では、国内総生産(GDP)に対する家計債務の比率が高まっている(表1)。中でも水準が高いのは、マレーシア、タイ、韓国、シンガポールである。
家計債務の多くは住宅ローンであり、これは家計所得の上昇や、住宅所有志向の高まりを反映している。また銀行からの資金調達が比較的容易なことが、住宅ローンの伸びにつながっている。
各国の金融当局はグローバル金融危機や、ユーロ危機を受けて政策金利を引き下げ、潤沢な流動性を供給した。家計の債務水準が高い国の中でも、相対的にリスクが高いとみられるのは債務比率の上昇ペースが早いタイ、マレーシアである。両国とも貸出審査基準に関する規制が他国に比べて緩いほか、住宅ローン以外のオートローンや無担保消費者ローンなども増加している。
家計債務の上昇に加えて、平均住宅価格の対所得倍率が上昇していることも、住宅購入者の負担増加、支払い能力の低下につながる。特に2010年以降住宅価格の上昇率が高いのは香港、シンガポール、マレーシアである。
平均住宅価格の対所得倍率は、香港では15.6倍、シンガポールは12倍に達している。中国の大都市も高く、北京は22倍、上海は16倍である。中国では特に2009年から2010年にかけて、景気刺激策の一環として銀行の貸出が急増したことが、
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