2013年12月24日
経済は、「絶対論」ではなく、相手のある「相対論」と言えよう。経済論議は、論理的にも、単純な「三段論法」の世界ではなく、一つの変数を動かせば、国民経済、国際経済、世界経済の他の全ての変数が、程度の差はあれ動く「相互依存」の世界である。
日本円の対外為替レートの水準が高いか、安いか、すなわち、「円高」か「円安」かの論議も、相対論、相互依存関係にある経済の論議の典型と言えよう。
昨年11月に衆議院が解散されて、総選挙、政権交代の可能性が出て来る前には、日本円の対米ドル為替レートは、80円前後であった。最近では、100円を上回るようになっている。1年余り前の水準を基準にすれば、25%以上も「円安・ドル高」の方向へ振れたのである。
米ドル建てで輸出している日本企業にとっては、円換算した輸出金額が、25%以上も膨張した勘定である。反対に、日本の労働者にとっては、米ドル換算の賃金率が、20%以上もカットされて事に相当する。アベノミクスの神髄は、このドル換算の賃金カットにあると言っても過言ではない。
しかし、2007年夏に、米国発の金融経済パニック(いわゆる、サブプライム危機)が勃発する前には、1ドルが120円台に乗っていた事を記憶している方々には、最近の日本円の対米ドル為替レートの水準は、まだまだ「円高」に過ぎると主張される向きも多いのは事実である。
では、本当にそうなのか。
一般には、ほとんど指摘される事がないが、国際決済銀行では、世界の各国・各地域の通貨の対外為替レートの高低を考える尺度の一つとして、名目実効為替レート指数、実質実効為替レート指数を、毎月推計し公表している。
名目実効為替レート指数は、実際の外国為替レートを、貿易相手国との貿易量をウェイトとして算出した平均である。実質実効為替レート指数は、更に、貿易相手国とのインフレ率の差を割り引いたものである。したがって、
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