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2014年どうなるTPP交渉(上) アメリカは頑なだったのか?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 シンガポール会合が不調に終わってから、主要紙の幹部記者やTPP参加国の政府高官たちから、TPP交渉の行方について、意見を聞かれるようになった。もちろん、私がウルグァイ・ラウンドなどの通商交渉の経験があることを、知っての上である。彼らから得た情報も踏まえ、TPP交渉がどうなるのか、情勢分析をしよう。

 日本の報道によると、TPP交渉は、アメリカの意気込みにもかかわらず、アメリカが関税の全廃を要求し、日本が農産物5品目の関税撤廃に1ミリとも譲らないという態度を示したため、2013年中の合意はできなかった。取材に行った記者の人によると、シンガポール会合では、アメリカと日本が長時間交渉している間、他の交渉国はじっと待っている状態だったという。

 アメリカが昨年内の合意を目指したのには、三つの理由がある。

 一つは、交渉上手なEUとの自由貿易協定交渉を本格的に始めようとしており、人手の少ないUSTR(アメリカ通商代表部)としては、TPPとEUという二正面作戦は避けたかったためである。組織の内部事情をよく知るフロマン通商代表にとってはこれが最も重要だったに違いないだろう。

 二つ目は、2014年はアメリカの中間選挙の年だという点である。貿易自由化は特定の業界には悪い影響を与える。アメリカにとっては、自動車とか繊維業界などだ。したがって、2014年11月の選挙の相当前に妥結することが望ましい。

 最後に、アメリカ憲法上、通商交渉の権限は連邦議会にあるという事情がある。このため、TPA(貿易促進権限)法によってUSTRは交渉権限を授権されてきた。現在TPAをUSTRは持っていない。もちろんTPAがなくても、交渉した協定について議会に承認を求めることも可能だが、

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