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2014年、世界の経済成長を牽引するのはアメリカと日本だ!

吉松崇 経済金融アナリスト

 「日本の景気回復は輸出で始まり、アメリカの景気回復は住宅投資で始まる」――さして理論的ではないのだが、これが、長年金融市場と景気を観察してきた私の経験則である。

 2013年のアメリカ経済を振り返ると、なんと言っても大きな事件は、5月のバーナンキFRB議長のテ-パリング(量的金融緩和の規模縮小)発言をきっかけとした市場の動揺と、10月に起きた政府機関の一部閉鎖であろう。そして日本経済では、勿論、2014年4月からの消費税増税の決定である。これらはいずれも経済成長にはマイナスに働くと見られる要因であったが、今になって振り返ると、日米共に株式市場はこれらのマイナス要因を咀嚼したうえで、高値を更新している。

アメリカの景気は底堅い

 昨年5月、バーナンキFRB議長の「景気が良くなれば量的金融緩和の規模を縮小する」との発言で、当時2%を下回っていたアメリカの10年物長期金利が3%近くまで、つまり1%以上上昇した。バーナンキ議長は、決して金融引き締めを示唆した訳ではなかったのだが、長期金利が1%以上上昇すれば金融引き締めと同じ効果がある。

 私は、この頃、ようやく持ち直してきた住宅需要が腰折れするのではないか、と危惧した。住宅投資に最も大きな影響を及ぼすのは長期金利だからだ。しかし、どうやら私の懸念は杞憂に終わったようだ。12月に発表された11月の新規住宅着工件数は年率換算109万戸となり、これは10月の89万戸から22%の増加であり、一年前の2012年11月の84万戸からはほぼ30%の増加である。私の感覚では、年率100万戸を超える新規住宅着工件数は相当に高い数字だ。住宅市場は完全に回復期に入ったと考えてよさそうである。

 昨年12月、ついにFRBはテーパリング(量的金融緩和の規模縮小)を発表した。ところが、金融市場の反応は5月の動揺とは全く異なり、長期金利はあまり上昇していないし、株式市場は高値を更新している。何故だろうか? 勿論、今回は縮小の規模がはっきりしたことで(FRBによる国債・モーゲージ債の買入れ額を月額850億ドルから750億ドルへ縮小)、市場参加者に安心感をもたらしたことはあろう。

 しかしそれ以上に、アメリカの景気が、5月と比べてはるかに力強く、市場がFRBの政策が実体経済と整合的だと評価したからだろう。例えば、5月に7.6%であった失業率は、11月には7.0%にまで改善している。また11月の鉱工業生産指数は101.7となり(2007年平均が100である)、1年前より3.2%も高い。このレベルは、2007年12月の金融危機以前のピークを超えている。

 アメリカの実質GDP成長率は、発表されている第3四半期までの平均をみると年率約2.5%である(第1四半期:1.1%、第2四半期:2.5%、第3四半期:4.1%)。ところがIMFが推計しているアメリカの2013年通年の実質GDP成長率は+1.55%となっている。これは、第3四半期の成長率が在庫投資でかさ上げされているのを勘案しているためだ。しかし、直近の鉱工業生産指数や新規住宅着工件数を見ると、アメリカの景気は足下で加速しているように見える。おそらく実際の成長率はIMF推計を上回り、来年は更に高い成長率が期待できる。10月の政府機関の一部閉鎖は、殆ど悪影響を及ぼさなかったようだ。

FRBのテーパリングと円・ドル為替レート

 昨年5月のバーナンキFRB議長のテーパリング発言の後、当時100円近辺にあった円・ドル為替レートは、94円台にまで円高となり、16,000円を伺おうとしていた日経平均株価は、12,000円台まで売り込まれた。株価下落の原因は、明らかに円高であった。

 ところが、12月になって実際にFRBがテーパリングを決定すると、円・ドル為替レートは105円近辺にまで円安が進行し、日経平均株価は16,000円を超えて昨年来の最高値を更新している。

 そもそも円・ドル為替レートは、この二つの通貨の相対価格であるから、日本の金融緩和がこれまで通り継続して、アメリカの金融緩和が終わりに近づく、との予想が強まれば円安に振れるのがノーマルな反応である。つまり、

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『労働者の味方をやめた世界の左派政党』 (PHP新書、2019年)、『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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