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アベノミクスは韓国経済モデル追随で、増税イヤーを乗り切るか?

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 最近、香港と韓国を訪れた。19世紀の英国がアジアの貿易・金融センターとして開発した香港の経済制度はレッセ・フェールで、今も税金、社会保険料など公的負担を極力抑え、そのトレードオフとして、医療費などの公的給付、財政の所得再分配機能も限られた古典的な経済社会である。

 通貨当局は為替レートを米ドルに固定して、独自の金融政策を放棄している。一方、韓国は、1993年の世界銀行による「東アジアの奇跡レポート」(日本政府が資金援助)で、教育水準や、政府や輸出主導の成長モデルなどで、日本に似た経済システムと称賛された。

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 現在は、少子化が進んでいることでも日本と共通している。しかし、1997年のアジア通貨危機後、国際通貨基金(IMF)主導による構造改革を経験した韓国経済をレビューすると、日本との違いがいくつかあることがわかる。なお輸出の特徴は、日本より輸出依存度が高く(2012年、韓国56.5%、日本14.7%)、対中国輸出割合(2012年、韓国:24.5%、日本:18.1%)も高い(表1参照)。つまり、韓国は内需に依存できないため、日本以上に国際経済の影響を受けやすい経済構造である点で、将来の「日本経済のカタチ」のひとつと言える。

日本と韓国との相違点

日本経済と韓国のそれを比較すると、以下のような相違点が浮かびあがる。

ソウル駅で筆者撮影拡大ソウル駅で筆者撮影

1.韓国自動車メーカーは現代自動車グループの2社のみに再編。軽自動車(韓国の上限は日本では小型車に分類される1000cc)が普及しない。

2.首都ソウル中心部に集中する高層マンション。

3.カジノ(1960年代の政策、現在、マカオ、シンガポールに次ぐアジア第3の市場規模)。

4.クレジットカードがコンビニエンス・ストアなど少額決済で使用可能(売上および課税の捕捉を高めるメリットとカード破産の増加につながるデメリット)。 

5.IT利用の速度、例えば、高速鉄道=写真=の車内でWiFiのフリーアクセス(通信会社との契約は不要)。 

6.雇用規制の緩和と外国人労働受け入れの促進(参考:2011年のOECD雇用統計、一人当たり年間平均総労働時間、韓国2090時間、日本1728時間、

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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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