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南水北調は中国経済成長持続の難題を解けずか~大気汚染と並び未来占う鍵~

団藤保晴(ネット・ジャーナリスト)

 「水と空気と安全はタダ」と思っている日本と違い、中国ではどれも貴重な資源である。中国が経済成長を持続できるか、今年は長江の水の北部転送事業による答えが出そうだ。既に重篤スモッグの大気汚染問題では赤信号が点きつつある。地方政府の膨大な隠れ債務に年金積立資金がほとんど無い年金債務問題など、財政の視点から成長持続性を疑う声を耳にするが、経済成長を続けようとしたら膨れる水需要に応じられなければ話にならない。

 南部の豊かな水を乾燥した北部で使う「南水北調」事業の1期分が昨年末に完工、今年から本格運用になる。1952年に故・毛沢東主席が発想した巨大事業がついに出来たのだから国をあげてのお祝いになって良いはずが、控え目な扱いが不思議でならない。ひとつには環境悪化・水質汚染の進行で飲用になる水を送れない恐れが高まっている点があり、地下水を汲み上げるよりも数十倍も高い単価になる水が広く使われるか、今後の維持費用も含めて疑問があるからではないか。まず完工した東と中央のルートを地図で見よう。2008年「南水北調特別セミナー」会議資料集から引用の原地図に説明を加えている。3つあるルートの内、富士山頂くらいの高地で難工事になる西ルートは未確定である。

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 東ルートは長江河口に近い江蘇省で取水、古く隋の時代の掘削で知られる運河や湖を経由して北上する幹線水路1156キロだ。天井川になっている黄河付近が最も高度があるために、低い位置にある長江最下流から合計65メートルもポンプアップして、黄河の下に掘ったトンネルを通す。中央ルートは長江の支流、漢江の丹江口ダムから北京まで標高差100メートルを利用した自然流下の幹線水路1246キロである。勾配は極めて緩やかで、水路幅は200メートルにもなる。既に工費に5兆円は投じられている。丹江口ダムの堤高を162メートルから176メートルにかさ上げするだけで周辺33万人を移住させ、水路開設などを合わせると計40万人を移動させた大プロジェクトだ。

 年間取水量は東ルートで150億立方メートル程度、中央ルートは146億立方メートルながら、途中の地域も水不足なので最終目的地の北京や天津に届くのは何分の1だけ。長江の流量豊富さから取水しても心配ないとされるが、長江河口から海水が逆流して重要都市・上海の水源を侵す恐れや、淡水が広くあふれていた東シナ海の海洋環境に響くと議論されている。2期工事以降では、さらに取水増強が予定されている。

 水も土も空気も環境汚染が深刻な中国できれいな水が送れるのか、従来の中国メディア報道は汚染改善は進んでいるとの紋切り型報道で来た。昨年末になって中国環境保護省が厳しい判断を出した。原文は中国語の《環保部:南水北調の汚染規制項目、完成は10%》(経済視察網)が「江蘇、山東、河南、湖北、陝西の5省に展開する南水北調の東・中央ルートを調査したところ、

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