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今は昔の「財界総理」、グローバル化で「企業は個別に動く」時代に

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 東レの榊原定征会長が、次の経団連会長に決まった。日立製作所の川村隆会長が固辞したことで急きょポストが回ってきた。新日鉄や東京電力など国家政策に密着する企業が経団連会長を占める時代は過去のものとなり、「財界総理」という呼び名も聞かれなくなった。

 東レは不況時にも研究開発の手を緩めず、海外進出に熱心な社風だ。会長職はトヨタ自動車、キャノン、東レと移るにつれ、海外展開する企業や先端技術で生きる企業へと色合いを変えてきた。

   経団連の弱体化が言われるが、日本の経済界が同じ利害のもとに集団行動する時代に幕が下り、グローバル化のもと企業が個別の経営判断で行動する時代が到来していることを、今回の会長人事は示している。

 日立が経団連会長を固辞したのは、国内の官公需依存の体質から脱皮し、世界のインフラ輸出に社運を賭けるにあたって、会長就任は足かせになるとの判断があったからだろう。要するに「全社の意識が海外を向いているときに、内向きのことはやりたくない」のである。

国内への束縛感強い安倍政権の政策

 企業の「日本離れ」に抗するように、安倍政権は円安をテコに国内への束縛感が強い政策を取っている。自ら描くシナリオに合わせるよう企業に要求するのが安倍政権の体質である。

 たとえば「国内での設備投資の要請」。国内市場は人口減少で大きくは伸びず、新興国や米国が成長センターになっているのだから、企業は海外への投資やM&Aを優先して考える。企業の死命を制する投資を政府への義理で行う経営者はいない。

 東レの場合も、地域別売上高は中国が全体の13%、韓国など他のアジア諸国を含めると31%(5300億円)を占める。今後も海外展開をどんどん進め、20年度には50%(1兆5千億円)まで高めるという。安倍首相の要請とはベクトルが逆

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