2014年01月28日
1月24日の国会での安倍首相の施政方針演説によると、「日本経済も、三本の矢によって、長く続いたデフレで失われた『自信』を、取り戻しつつあります」とのことである。
インフレ、インフレーションが物価水準の上昇を意味するのとは正反対に、デフレ、デフレーションとは、物価水準の下落を意味する。
デフレといえば、何か経済的な『魔物』かのように取り扱われる昨今である。
しかし、本シリーズの読者なら、経済的な議論には、必ず両面があり、絶対的なものではなく、相対的なものであるとの認識があろう。
安倍首相は、自分の施政下で物価水準が上がったのを、手離しで自画自賛している訳である。
確かに、日本政府総務省統計局が算出している消費者物価指数の統計を見ると、最新の昨年11月までの1年間に、総合消費者物価指数は1・5%の上昇を見た。その1・5%分の内で、0・9%分は食料品、エネルギーなどの生活必需品の値上がりによるものであった。食料品価格は1・9%、エネルギー価格は7・5%も、最近1年間に上昇したことになっている。
現役の大多数の労働者にとっては、賃金が上がる前に、生活必需品の価格が上がった訳で、少しも結構なことではない。(筆者の本シリーズ・今月7日付けコラム掲載の日本の名目・実質賃金指数のグラフ参照)http://astand.asahi.com/magazine/wrbusiness/2014010600003.html
収入が固定している年金生活者にとっても、現役労働者と同様に、経済状況は悪化したというのが実状であろう。
では、日本の総合消費者物価指数の水準は、実際は如何に推移して来たのか、米国やイギリス、『物価の優等生』と言われる事が多いドイツとの比較で、最近の半世紀余りのデータを眺めるのも、最近の日本を客観視するために大切なことだ。
日本の戦後復興がほぼ完了したとされる1955年(昭和30年)を基準年として、総合消費者物価指数の水準が如何ほど変化したかを見ると、興味ある統計的な事実が浮かび上がる。
まず、第2次世界大戦の戦勝国であったはずのイギリスは、1955年を起点としても、最近までに、消費者物価の水準が20倍近くにもなる『超インフレ』を経験していることである。
イギリスの消費者物価水準の上昇が非常に大きいので、イギリスを除外し、残りの3カ国の推移をクローズ・アップしたグラフを作成すると、
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