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[3]「正しい情報でご執筆いただき、お配りしたい」

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

 次第に報道内容に腹を立てていく東電の幹部ら。その中には現場の福島第一原発を預かる吉田昌郎所長もいた。

 2011年6月14日(火)午前9時からの全体会議で、吉田氏はこの日の朝刊に報じられた内容にかみついている。

 「250ミリシーベルト超えに6人追加となったことをプレスで初めて知った。特に保安班の連絡が非常によろしくない。これはぜひ改善していただきたい」

 同日の朝刊では、東電の社員8人が、事故による緊急作業で認められている被曝上限250ミリシーベルトを超えていることが明らかになったと報じている。

 朝日朝刊には厚生労働省の匿名の幹部のこんな発言も記されている。

 「こんな状態では、原発で働けなくなる人が足りなくなるだけでなく、これから働こうという人もいなくなってしまう」

 吉田氏の怒りは収まらない。

吉田所長 : ああいう報道を聞くと現場の人間がやる気をなくしてしまう。被曝した人がそのときどんな気持ちで仕事をしていたのか、そういう状況配慮がまったく感じられない。ああいう報道の仕方を続けていくのなら、我々は作業員をここから出して差し上げますよ。

本店保安班 : サイトには大変ご迷惑をおかけしました。大変申し訳なく思っております。以後気をつけます。

武黒一郎フェロー : 事前にサイトとの調整がなされていなかったとの所長の指摘もありましたので気をつけて対応してください。

本店広報班:以後気をつけてまいります。厚生労働省に提出すると、すぐ記者たちが「もってこい」と言うので……。記者から求めがあって……。

吉田所長 : 厚労省に持って行ったら言われるのは当たり前だ。だから(持って行く前に)事前にサイトに言えということだ。

 吉田氏は報道機関を非難しているのではなく、社内の連絡の不十分さと、自分たちが蚊帳の外に置かれていることを怒っていることがわかる。

 この議論は同日午後7時からの全体会議でも

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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

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