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もんじゅ君対談集「3.11で僕らは変わったか」を読む/もうちょっと真剣に、まじめに生きたい

小森敦司 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から3年がたった。日本にとって消すことのできない「歴史」になった。それは直接、被害を受けていない人でも、その暮らし方や考え方に大きな影響を与えたはずだ。

もんじゅ君拡大もんじゅ君

 私自身も、それを整理したいのだが、難しい作業だ。でも、福井県の高速増殖炉をモチーフにしたゆるキャラ「もんじゅ君」がこのほど出版した対談集「3.11で僕らは変わったか」(平凡社)に、結構、いいヒントをもらえたような気がする。

 「もんじゅ君」を紹介すると、原発事故後の2011年5月、「ケンカみたいじゃなく、これからのエネルギーってどうすればいいの、ってはなしあいができるように」「放射能の不安を減らしてくらしていけますように」と願って、ツイッターを始めたのだそうだ。

 ほのぼのとした語り口と批評眼で、いまや10万人ものフォロワーがいる。「もんじゅ君」の着ぐるみが脱原発の集会に登場すると、たちまち握手攻めになる人気者だ。

 電力・エネルギーを担当する私も、「もんじゅ君」が原発事故のあとに出した「おしえて!もんじゅ君」(同)などを読んで、原発の問題を平易な言葉で、鋭く追求する力量に驚くと同時に、ファンになった一人だ。

 今回の対談集で、あらためて「もんじゅ君」の「中の人」の素養に感嘆し、その優しさに癒やされた。私も仕事がら著名人にインタビューをする機会はある。その方の著作などを丹念に読み込み、その人のことをできるだけ理解してからと心がけているのだが、この対談集は、「中の人」のそうした努力だけでなく、「中の人」自身が持つ魅力に相手が反応して、話がどんどん盛り上がっていることが分かる。すごい。

 その対談相手は、美術家の奈良美智さんや写真家の鈴木心さん、哲学者の國分功一郎さんら、いま、ひっぱりだこの旬な方々(いまだけでなく、今後も、それぞれの世界で重きをなすだろう)だ。そして、「もんじゅ君」によれば、「震災と原発事故を受けとめ、悩み、考え、それぞれの仕事になにかを還元している」方々だ。読むと、そうした一流の方々が、みな、「まじめ」に生きていることがわかる。

 例えば奈良さんは、「もんじゅ君」にこう吐露する。「(震災後)自分が生きていることがなんかこう、悪いことみたいな気持ちがした」「しばらくずっと絵が描けなかった」。そして、「自分にできることはなんだろうと考えたら『みんなになんか絵の話をしたいな。絵を見せたいな』って思った」という。

 もっともっと紹介したい「もんじゅ君」の言葉の数々がある。しめくくりに、本書の「はじめに」にあった言葉を記しておきたい。

 「できるなら素直に、これまでよりもうちょっと真剣に、自分はなにをしたいのか、なにができるのかを考えて生きていきたい。それはあかるい暮らしとか楽しい会話とかあいいれないものではありません。にこにこしながら健康に、そしてまじめに生きていくことはできるはずです」

 そうだよね、そうありたいな、「もんじゅ君」!。


筆者

小森敦司

小森敦司(こもり・あつし) 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

東京都出身。1987年入社。千葉、静岡両支局を経て、名古屋や東京の経済部に勤務、金融や経済産業省を担当。ロンドン特派員も経験し、社内シンクタンク「アジアネットワーク」では地域のエネルギー協力策を研究。現在、エネルギー・環境分野を担当、とくに原発関連の執筆に力を入れている。著書に「資源争奪戦を超えて」「日本はなぜ脱原発できないのか」、共著に「失われた〈20年〉」、「エコ・ウオーズ~低炭素社会への挑戦」。

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