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マウントゴックスの経営破綻とビットコインの信頼性は全く無関係だ!

吉松崇 経済金融アナリスト

 インターネット上の仮想通貨であるビットコインの取引所、マウントゴックス社が2月28日、民事再生法の適用申請を行い経営破綻した。この会社のシステムがハッカーに狙われて、顧客から預かっていたビットコイン75万枚と自社保有分の10万枚、合計85万枚(約115億円相当)が盗まれたためだといわれる。

会見の最後、座ったまま頭を下げるマウント・ゴックスのマルク・カルプレスCEO=2014年2月28日午後7時28分、東京・霞が関、長島一浩撮影 拡大会見の最後、座ったまま頭を下げるマウント・ゴックスのマルク・カルプレスCEO=2014年2月28日午後7時28分、東京・霞が関、長島一浩撮影

 この事件を契機に、ビットコインをめぐって様々な議論が沸きあがっている。その論点も、ビットコインの信頼性を論じるものから、投資家保護・消費者保護の観点からの規制のあり方、そして「ビットコインは貨幣なのか商品なのか?」という本質論まで、多岐にわたる。

 ただ、この事件で「ビットコインがハッカーに盗まれた」というのが正しいとすると、これはマウントゴックス社固有の問題であり、ビットコインそのものの問題ではない、と考えるのが妥当だろう。マウントゴックス社のシステムがハッカーの攻撃に対して十分な防御ができていなかったので、保有するビットコインが盗まれたというだけの話である。脆弱であったのはマウントゴックス社であって、ビットコインという仮想通貨が脆弱で、その価値が怪しいものだったという訳ではなさそうだ。そもそも価値の怪しいものを誰も盗もうとはしない、と考えるのが常識的である。

 それでは、ビットコインの価値や信頼性をどう考えればいいのだろうか?その前に、ビットコインとはそもそも何なのだろうか?

ビットコインは「バーチャルな金貨」である

 少し遠回りだが、ビットコインを、これまでに存在する電子マネーや電磁的な資金決済の方法と比べてその違いを見ると、ビットコインの特徴が明らかになる。

 典型的な電子マネーであるスイカやエディーと比べて見よう。例えば、スイカの価値は発行体であるJR東日本の信用に依存している。スイカの保有者は、駅に設置された機械でスイカに日本円をチャージするが、これはスイカの保有者がJR東日本を信頼してお金を預けているということだ。

 このスイカを使って様々な買い物が出来るのは、スイカによる支払いを認めているお店が「後でJR東日本が確かに払ってくれる」と信頼しているからだ。スイカという電子マネーはこのような信頼関係で成立している。

 そもそも、日本円そのものが、現在のような管理通貨制度のもとでは、日本銀行の負債に過ぎないので、人々がその価値を受け入れて使用しているのは、日本銀行、ひいては日本政府を信用・信頼していることが前提になっている。だから、日本円に限らず、管理通貨制度の下にある通貨は「信用通貨」とか「信用貨幣」と呼ばれる。

 さて、ビットコインの生みの親だといわれるサトシ・ナカモト氏は、その論文、”Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System” (May 24, 2009) のなかで、ビットコインというシステムの目的は、「信用や信頼に基づかない資金決済の方法を提供することにある」と述べている。

 つまり、ナカモト氏を始めとするビットコインの開発者たちは、「信用貨幣」ではない通貨、そしてネット上の仮想通貨であるから、 ・・・ログインして読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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