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 政府は11日、労働者派遣法改定案を閣議決定した。前回、日本の派遣は「偽装雇用」の温床になりやすいと指摘した。だが、専門業務とされる26業務以外の派遣で3年の期間制限を超えたら派遣先は直接雇用を申し込むことで「生涯派遣」に一応の歯止めがあった。今回の改正案ではこの歯止めも外され、3年たって別の労働者に取り替えればあらゆる業務で派遣を利用できる。

 トヨタのカンバン方式は、必要な時、必要なだけ部品を取り寄せることで在庫を抱える費用を節約する策として知られる。今回の改定案は、必要な時、必要なだけ働き手を取り寄せ、いらなくなれば派遣会社に戻す形でクビを切って人件費を圧縮する「人間のカンバン方式」を加速させかねない。

正社員雇用を浸食

 「人間のカンバン方式」は、すでに広がっている。

 今年2月、「働く女性の全国センター」の総会で、シングルマザーの派遣社員、宇山洋美さんがこう訴えた。「派遣先の上司に正社員化を求めたら、派遣の老後がどうなろうが知ったことではないと言われた」。1999年の派遣の原則自由化を経て、女性の正社員職だった事務職は派遣にとって代わられた。

 宇山さんも派遣しか仕事が見つからず、3カ月契約を何度も更新して14年間、同じ派遣先で、正社員と同じような仕事を引き受けてきた。それでも、昇進・昇格、賞与、交通費、忌引き休暇、退職金、諸手当は一切なし。スキルを上げればなんとかなる昇給があるかもと自前で英語を勉強し、外国からの顧客も接遇したが、昇給はなかった。派遣会社は「賃金は派遣先の派遣料次第」といった。

 突然の雇用打ち切りも少なくない。派遣先の公益法人と派遣会社を相手取って訴訟中の女性は2009年、派遣先の公益法人からいきなり電話で、「今月末で契約期間満了」と通告された。期間制限のない26業務の「OA機器操作」名目での派遣だったが、広報から接遇まで、さまざまな仕事を任され、3カ月契約を何度も更新して3年3カ月働いた末だった。

 生計の道を断たれた女性は、

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筆者

竹信三恵子

竹信三恵子(たけのぶ・みえこ) ジャーナリスト、和光大学名誉教授

和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年、朝日新聞社に入社。水戸支局、東京本社経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から和光大学現代人間学部教授・ジャーナリスト。2019年4月から現職。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)、「女性を活用する国、しない国」(岩波ブックレット)、「ミボージン日記」(岩波書店)、「ルポ賃金差別」(ちくま新書)、「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書)、「家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの」(岩波新書)など。共著として「『全身○活時代~就活・婚活・保活の社会論』など。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。

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