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 世界の経済、軍事などのバランスは、刻々と変化している。十年一昔と言われたものである。しかし、最近では二年、三年一昔と言っても過言ではないように、変化のスピードが非常に速い。

 国家などの社会集団が生きる、生き残るには、変化する環境に合わせ、できることなら、その変化を見越して、行動することが求められる。

 今次のウクライナ紛争で、非常に明確になった事実がある。

 米国は、オバマ大統領自身が、軍事的な選択肢は、初めから除外したことである。

 これは、ある意味では当然である。重核武装国家であるロシアと、直接に戦争状態に入るわけには行かない。しかも、ウクライナは、NATO加盟国ではないからである。

 米国、カナダ、欧州諸国が加盟するNATO(北大西洋条約機構)条約の第5条では、加盟国に対する武力攻撃は、NATO全体に対する攻撃とみなされて、機構あげての軍事的な反撃の対象となる(個別的、集団的自衛権の発動)。NATO加盟の西欧諸国が、本来は米国の戦争であるアフガニスタン戦争に参画しているのは、NATO条約第5条の下で、集団的自衛権を行使する義務を負っているからに他ならない。

 しかし、アフガニスタン戦争のきっかけになった2001年の9・11事件が、単なる犯罪行為の『テロ』なのか、『戦争行為』と見なし得る武力攻撃かは、12年半も経った現在では議論が分かれよう。

 また、旧ソ連崩壊後のウクライナが核兵器を放棄する見返りの1994年のブタペスト・メモも、署名国の米国、イギリス、ロシアが、ウクライナの主権の侵害があった場合には、国連安保理事会に提訴することを義務付けているだけで、直ちにウクライナ側に立って参戦することまでをも義務付けているわけではない。安保理常任理事国のロシアが拒否権を発動すれば、国連によるロシアに対する軍事的制裁は有り得ないわけである。

 キッシンジャー元国務長官や、米国の旧ソ連封じ込め戦略のきっかけの論文を書いた元外交官の故ジョージ・ケナンは、生前にウクライナのNATO加盟に反対している。対ロシア戦争に引き込まれる危険を承知してのことであろう。

 今次のウクライナ紛争を通じて、専門家には周知の事ではあるが、世間一般にも報道を通じて明確に伝えられていることがある。

 米国は、欧州で地上戦を戦う意思がないだけではなく、その備えも全くないことである。

 この事情は、東アジア・東南アジアでも全く同じである。

 そうしたことが分かりやすいのは、

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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