2014年04月02日
遺伝子を注入するなど複雑な処理をしないとできなかったiPS細胞とは異なって、(発見者の小保方晴子さんの表現によると)オレンジジュース程度の弱酸性の液に浸けるだけで万能細胞、STAP細胞ができるという画期的な発見が、実は怪しい(というか捏造ではないか)となって大変な騒ぎになっている。小保方さんが所属する理化学研究所は1日も長時間の会見を開いたが、真相は依然としてすっきりとは分からない。
問題になったのは、これが画期的発見であることと再現できないことによる。画期的でなければ誰もわざわざ再現しようとしないだろうから、再現できないことが問題になることもなかっただろう。率直に言って、かなりの数の学術論文は、たいしたことのない、あるいは当たり前のことを発見しただけで、ああそう、と言われるだけで終わりである。
画期的であるという意味は、そのように簡単に万能細胞ができるのなら、安価に大量に、癌になる危険の小さい万能細胞ができて、様々な再生医療に使えるだろうとの期待が高まったからだ。学問的に画期的な発見というだけでなく、実際に人の命を救い、かつ、莫大な利益にも結び付く可能性があるから、多くの研究者が再現実験を試みた。さんざん試してもできないとなると、これはなんだとバッシングになったという訳だ。
経済学の場合でも、ある論文が出て、それと同じことをしても同じ結果にならないということは多々ある。最近、話題になったのは、財政赤字が拡大すると成長率が大きく低下するという論文だ。ハーバード大学のライハート教授とロゴフ教授によると、1945年から2009年まで世界100か国近くのデータから、国の累積債務/GDP比率が90%を超えると成長率が年平均2.8%からマイナス0.1%に低下してしまうという。
この論文には、そもそも因果関係が逆ではないかという批判が最初から付きまとっていた。成長率が下がれば税収が減るのだから、財政赤字が増えるのは当然だ。だから、財政赤字が成長率を引き下げたのではなく、成長率が下がったから赤字が増えたのだという批判である。しかし、因果関係はともかく、そういう関係があることは認められていた。しかも、成長率が2.8%からマイナス0.1%になるというのは印象的である。この研究に影響されて、IMFやOECDが、リーマンショック後の緊縮財政を推奨したのではないかと言われている。
しかし、アムハースト大学のトマス・アンダーソンという大学院生が、ライハート=ロゴフ論文を検証すると、そのような結果にはならなかった。結局のところ、ライハート=ロゴフ論文は、成長率の平均をエクセルシートで計算する際に、
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