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日豪EPA合意、国内の畜産に大きな影響なし

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 日豪EPA合意によると、38.5%の牛肉関税を、冷蔵牛肉については、初年度に32.5%とし、15年目に23.5%、冷凍牛肉については、初年度に30.5%とし、18年目に19.5%とする。輸入が一定以上増えたら、元の38.5%に戻す。これをセーフガードといい、その発動数量は、冷蔵牛肉については、初年度13万トン、10年後14.5万トン、冷凍牛肉については、初年度19.5万トン、10年後21万トンである。

 これを冷蔵牛肉で図示すると、次の通りとなる。

 2012年度の豪州からの牛肉輸入量は、冷蔵牛肉12.7万トン、冷凍牛肉18.1万トンである。つまり、今の輸入量を若干上回るだけの低関税の輸入枠を設けたにすぎないので、それほど大きな影響が生じるとは思えない。本来EPAでは関税撤廃が原則である。韓国と豪州のEPAでは、韓国は牛肉関税を15年で撤廃するとしている。これに比べると、豪州側は大きな譲歩をした。

 この交渉結果は、私がTPPについてかねて主張していた内容のとおりである。

 つまり、「特定の国からの輸入量の増加によって国内産業に影響が生じる場合には、TPP協定の中にセーフガード措置を導入して対処することも考えられる。我が国の自由貿易協定には、当該国に対する関税を域外国と同じ関税まで引き上げることができるという規定が置かれている。これはアメリカも認めている。TPP交渉において、関税撤廃の例外品目を求めて交渉するよりも、セーフガードについて交渉すべきであろう。」(『日本の農業を破壊したのは誰か?』講談社242ページ)

 我が国の牛肉には3種類のものがある。品質の良いものは、

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