2014年04月16日
主要各紙は5日、政府が外国人労働者の受け入れを増やす方針で検討を決めたと報じた。働き手が不足している建設・介護、農業のほか、女性の就労を支援するために家事サービス分野でも受け入れを拡大するという。外国人労働者の人権を守る仕組みが弱い日本社会での受け入れ拡大はさまざまな問題を引き起こす恐れがあるが、中でも気になるのは家事サービス分野への受け入れだ。
女性が外で活躍するには、それまで女性が家庭で担ってきた労働を支える仕組みが不可欠だ。ここに公的資金を出したがらない社会では、移住家事労働者への依存度が強まる。税金を使わず、普通の家庭が購入できる価格で家事サービスを拡大させるには、買い叩きやすい移住女性労働者の活用が手っ取り早いからだ。「女性の活躍」と「三歳までは家庭で育休」を同時に掲げ、女性が外で働くためのコストの自己負担化を図る現政権がこうした方向に踏み出すことは、ふしぎではない。
問題はこの政権が、こうした政策が生み出す落とし穴にどれだけ自覚的であるかだ。昨年秋に出版した『家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの』(岩波新書)でもすでにふれたが、落とし穴は三つある。ひとつは移住家事労働者の人権侵害の激増、二つ目はその結果起きる関係国との摩擦と家事労働者の供給の不安定化、三つ目が、家事サービスを自力で買えない層の貧困化だ。
移住労働者は、保護されるべき枠の外にある人々という偏見の下で、男性でも人権侵害にさらされやすく、賃金未払いや労災隠しなどがしばしば表面化してきた。
そうしたなかで家事労働者として働く女性は、さらに大きなリスクを負っている。家事労働は家庭という密室での労働であるため、第三者からの目が届きにくく、長時間労働や雇い主のセクシュアルハラスメント、虐待などが起きやすい
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