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迫るオバマ大統領訪日、どうなるTPP交渉

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 甘利明TPP相が16日に訪米し、翌日からフロマン通商代表と、オバマ大統領訪日前の最後の協議を行うことになっている。

 外から見ていると、甘利大臣とフロマン通商代表、その下の事務レベル協議については、よくわからないところが多い。改めて事実関係を押さえておこう。

 日本では、自民党のTPP委員会や国会の農林水産委員会は、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖などを関税撤廃の例外とし、これが確保できない場合は、TPP交渉から脱退も辞さないと決議している。自民党の農林族議員は、牛肉関税を削減した日豪EPA合意が最低限のものだと決議し、国会決議を順守するよう、安倍首相や甘利大臣に申し入れている。

 日本政府は、日豪EPA合意によってアメリカが柔軟な姿勢に転じることを期待していたが、先日の甘利大臣とフロマン通商代表の会談では、アメリカはわずかばかりの柔軟性を示したにすぎない。

 アメリカはTPA(貿易促進権限法)を持っていないので、合意したとしても、連邦議会に修正される可能性がある。それを避けるためには、連邦議会が納得するような合意を作り上げなければならない。ということは、アメリカの関連業界(牛肉・豚肉)が納得するようなものでなければならないということである。

 しかし、アメリカの業界は牛肉・豚肉の関税撤廃を強く要求している。日豪EPA合意は、これらの業界を揺さぶるような内容ではなかった。日本政府の見方は甘かったというしかない。

 第一に、牛肉については、穀物で肥育したアメリカ産牛肉は牧草で肥育した豪州産牛肉よりも品質はよい。アメリカはブラジル、豪州に次ぐ第三位の牛肉輸出国であるが、第一位の牛肉輸入国である。輸出量も輸入量も、ともに100万トン程度である。

 アメリカのマクドナルドなどで販売されるハンバーガーの多くは、豪州産牛肉である。つまり、アメリカは脂肪分の少ない低級牛肉を輸入して、穀物肥育の高級牛肉を輸出しているのである。豪州産牛肉の関税が多少削減されても、

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