2014年04月21日
「景気は良いですか、それとも悪いですか」――。
先日、勤務する長崎の大学の授業で学生に挙手を求めると、9割近くが「景気は悪い」を支持した。入手できる3月までの経済指標で考えれば、欧米の景気回復による外需のほか、消費税前の駆け込み需要も後押しした。「景気は良い」の答えが半分近いだろうと想定して問いかけた。想定外の回答で、教員としては「サプライズ」だった。
9割近い学生が選んだ「景気が悪い」との回答への反証として、景気循環論からは次のように説明することができる。
内閣府経済社会総合研究所が公表する景気基準日では、戦後14回目の景気循環は、戦後最長の73カ月、拡張を続け、2008年2月にピークを迎え、2009年3月がボトムだった。つまり米国発のサブプライムローン問題が金融機関経営の緊急対応に飛び火する中で、日本の景気はピークを迎え、短期の景気循環の波としては回復した。
もちろん、アベノミクスや東京五輪が首都圏住民に景気の良さを伝え、復興需要の東北に比べて、九州などの地方経済に景況感の違いがあることは理解できる。同じ九州人でも地元の国公立大学進学者と、首都圏など大都市圏、とくに私立大学進学者とは、思考や背景も異なるのだろう。
ただし、エコノミストの胸に突き刺さるのは、授業感想用に手渡した原稿用紙に記された「我々の世代は成長を知りません」という感想だった。現在、就職活動を続ける4年生は現役なら、2008年に高校に入学している。将来の進路を具体的に考え始める時期に、100年に一度の金融危機と喧伝されたリーマン・ショックや雇用状況をそのころ見聞しているわけだ。
今年の就職活動(企業にとっては採用活動)が山場を迎えている。現在の4年生から1年生まで、進路や資格という言葉に敏感である。世界金融危機の緊急経済対策から一部大学には予算が配分され、その後、全国的に普及した大学のキャリア教育の影響もあり、1年生の入学当初から、キャリア教育が用意されている。
キャリア・コンサルタントが1年中、大学を訪問して、講演会や就職セミナーを請け負っている。キャリアセンターや就職部のほか、
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