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入社式には親は不要、しかし東大総長も、入学式に親は来るなとは言わない

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 埼玉県の県立高校の教員が入学式に欠席した問題は、入学式の家族出席の可否、ワーク・ライフ・バランス、そして教員の役割など多様な論点を含んでいる。どの論点も時代とともに変化しうる個々人の価値観と深くかかわっており、世代や各論者の実体験によって受け止め方が随分、異なる。

 解はひとつではない。ただし、自分が校長なら勤務校の入学式の出席、つまり職務優先をお願いしつつも、最終的には「わかりました」と教員の有給休暇の申し出をやはり認めた、いや認めざるを得ないと思う。

入学式の家族出席は大学でも常識である

 入社式には親は出席しない、できないというのは、日本社会のコンセンサスとして崩れていない。しかし、高校生はおろか、大学でも入学式、卒業式の家族の出席は日常になっている。「必須」ではないが、「選択肢」としては認めざるを得ない。

 東京大学のように、学生数より家族の数が多いのは例外としても、休みが比較的自由に決められる専業主婦や自営業者だけではなく、勤め人のパパやママも、有給休暇で、出席することを当然、検討されるだろう。昔なら、仕事の忙しさなどから、「子供に干渉するな」、「入学式は小学校まで」と母親を怒鳴りつめる父親も少なくなかっただろうが、親が出席することが日常的な風景があるということだ。大学の卒業式でも、家族が参加するのは当然の選択肢のひとつになっているのだ。

「一日も早く独り立ちしてほしい」

 もっとも、建築家で東京大学特別栄誉教授だった安藤忠雄氏(1941年生まれ)は2008年の東京大学入学式で次のように挨拶した。

 「まずは、自立した一個の個人となるためには、一日も早く独り立ちしてほしいと思います。ここにいる3千人強の学生たちは、今日、幸福な形で入学したのですが、この式に立ち会われている6千人を超える家族の方々、この日は巣立ちの日だと思って、親子関係をしっかり考えてもらうほうがいいと私は思います。“親は子を切り離し、子は親を切り離せ。”極端なようですが、子供が大学生にもなったら、

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