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「健康寿命延伸社会」への険しい道(上) 厚労省プラン「医療費・介護費の効果額5兆円」の2倍増を目指せ

石川和男 NPO法人社会保障経済研究所代表

 私たちの眼前には多くの課題が山積していることは論を待たない。とりわけ、すで突入した少子高齢社会をいかに凌いでいくかは、国内のみならず、海外の先進諸国からも高い関心を呼んでいる。世界の先進諸国も、遠からず少子高齢社会を迎えることが確実な情勢で、日本はその中でも“少子高齢化の先進国”となるからだ。

 こうしたなか、政府・厚生労働省は、いわゆる“団塊の世代”が75歳以上となる2025年に向け、「日本再興戦略」(2013年6月策定)と「健康・医療戦略」(同)の一環として、『国民の健康寿命が延伸する社会』を構築し、予防や健康管理に係る具体的な取組を進めようとしている。厚労省が2013年8月に策定した「『国民の健康寿命が延伸する社会』に向けた予防・健康管理に係る取組の推進」というプラン(以下「厚労省プラン」)がそれだ。

 昨年来、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が脚光を浴び、デフレ脱却や成長戦略のかけ声に隠れるかっこうで、あまり注目されていないふしはあるが、財政の持続性や未来の国民生活の安心、安定という意味では、極めて重要な施策だ。今回は3回にわたって、この厚労省プランが策定された背景を踏まえつつ、その内容を具体的に読み解き、課題を提起していきたい。

社会保障制度への国民的関心の高まり

 年金や医療・介護を中心とした社会保障制度に対する国民的関心が以前にも増して高まっているのは、少子高齢化に突き進む人口構成の変化を国民自身が敏感に感じ取っているからではないだろうか。最も近い将来の人口構成の推計(2015年の人口ピラミッド)を示すと、次の通りだ(図表1)。

図表1:人口ピラミッド
 日本では、1960年代には、国民皆保険・国民皆年金といった現行の社会保障制度の基本的枠組みが整った。世界の先進諸国に比べ、遜色のない制度である。

 国民皆保険・皆年金が達成されてから半世紀が経過し、少子高齢化といった人口構成の大きな変化、非正規労働者の増大など雇用基盤の変化、家族形態・地域社会の変化など、社会保障制度を支える社会経済情勢には大きな変化が生じている。

胴上げ→騎馬戦→肩車という変化

 高齢者数は2040年頃まで増え続ける。2020年には高齢化率が約30%に達すると見込まれ、日本の高齢化水準は世界でも群を抜いたものになる。

 半世紀前には65歳以上の高齢者1人を9人の現役世代で支える「胴上げ」型の社会だった日本は、近年は3人で1人の「騎馬戦」型の社会になり、このままでは、2050年には、国民の4割が高齢者となって、高齢者1人を1.2人の現役世代が支える「肩車」型の社会となってしまう。

 現行の社会保障制度は、給付に見合う負担を確保できてはいない。その機能を維持し、制度の持続可能性を確保していくためには、

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