2014年05月15日
中国の銀行業界は、ストレスへの耐性を一定程度持っているが、規制や経済環境の変化に伴い、今の好条件が維持できなくなる可能性もある。例えば、高い成長率については、少子高齢化の進展と人口減少、生産性の低下などが懸念されている。また銀行の高い収益性についても、預金金利自由化や、銀行以外の金融機関との競合激化によって、今の厚い利ざやを確保していくことは難しくなっていくだろう。
前政権の下では、金利自由化や預金保険制度の導入、中小企業の調達手段の多様化といった金融制度改革は、国有銀行の抵抗などもあり、あまり進展しなかった。一方現政権は、金融制度改革を優先課題として掲げており、周小川人民銀行総裁は、2014年3月に預金金利自由化を今後1-2年で実現すると発言している。現在の硬直的な銀行規制が、シャドーバンキングの増加につながっていることを鑑みると、金融自由化は今後加速していくだろう。
さらに、日本のケースと比較して中国の銀行は、景気の大幅な悪化や不動産価格の低下といった、システムに負荷を与えるイベントの影響を受けやすい面もある。中国の低所得世帯は、日本の低所得世帯よりも景気低迷の影響を受けやすい。中国の一人当たりの名目GDPは2013年に6,910米ドルであったが、これに対し1990年の日本は2万4,713米ドルであった。
加えて、中国では失業保険などの社会のセーフティネット(社会保障制度)が、十分に整備されていないため、経済成長の鈍化が政治リスクに結びつく可能性が相対的に高い。また、金融危機の経験が少ないため、金融商品の破たんが、投資家や市場に想定外のショックを与えるリスクもある。
中国のシャドーバンキングは、金融システムにとってのアキレス腱であり、信用収縮の引き金となるリスクを内包している。日本の銀行危機においても、銀行規制の対象外のノンバンク等による貸し出しが1980年代に急速に拡大し、民間セクターのレバレッジを加速させた。
日本の預金取扱機関の貸出総額に対するノンバンク等を通じた貸し出しの比率は、1980年には19%であったが、1990年に34%とピークに達した。銀行は不動産関連貸出について当局に報告する必要があったが、
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