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驚いた! 規制改革会議の農協改革案に大きな意義

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 政府規制改革会議が5月14日に出した農協改革案には驚いた。すでに、新聞では概要が報じられていたが、本当に文書で出されるとは、思わなかった。

 農協は戦後政治における最大の圧力団体である。農協問題は難攻不落の要塞のようなものだ。1955年には総理を目指していた有力政治家、河野一郎農林大臣が、農協から金融事業を分離しようとしたが果たせなかった。このときは腹心の国会議員に試案を出させただけだった。

 近年の総理では最もリーダーシップを発揮した小泉総理の下でも、規制改革会議で同じような分離論が検討されようとした。しかし、検討もしないうちに自民党農林族が官邸に押し掛けて、これを潰してしまった。

 省庁は当然のこと、諮問機関も含め、政府の機関が文書を出したことは、一度もなかった。検討していることが伝えられるだけで、農協から大変な政治的圧力が加えられてきた。

 今回は、政府の機関が文書で改革案を公表したのである。稲田担当大臣は当然内容を了承の上だろうし、農協を敵に回そうということであるから、安倍総理や菅官房長官も、内容はともかく、少なくとも文書を出すことには了解しているはずである。

 この意義は大きい。私が若い役人時代、農水省の先輩から「政府の最終決定ではなくても、およそ役所の文書というものは、いったん書かれたり、ましてや出されてしまったら、修正するのは容易ではない。7割方決まってしまったようなものだ。」と言われたことがある。

 もちろん、これから規制改革会議は、農水省や自民党と折衝しなければならない。問題の困難性から、改革案に書かれていることが、7割も実現するとは思えない。改革案に書かれている3点は、農協にとってはとんでもないことだからだ。

 第一に、農協の政治活動の中心だった全中(全国農業協同組合中央会)に関する規定を農協法から削除してしまう。農協法では全中は系統農協などから賦課金を徴収することができることとされている。これで全中は78億円を集めている。農協法の後ろ盾がなくなれば、

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