2014年05月28日
筆者は企業の環境・CSR活動やNPOとの協働などに関する、いくつかのアワード(顕彰)の審査員をさせて頂いていますが、最近、残念な事実を知りました。
それは、数年前にある「大賞」でグランプリを獲得した企業が、受賞の半年以上前に、NPOに対する支援を事実上打ち切っていたのです。支援期間はたった1年でした。
すでに終わっていた支援について、それを隠し通し、堂々と受賞していたのであれば、それは企業倫理にもとる行動と言わざるを得ません。審査員の一人として、まさに裏切られた思いでした。
企業同士の取引であれば、短期間で終了することはよくあることです。しかし、NPOは市民を代表する存在であり、その背後には多くの受益者がいるのです。そうした関係性から、企業が一方的にNPOを安易に「切る」ようなやり方は、多くの人たちから不信感を抱かれかねない行為です。
企業のCSR活動は、10年、20年と続く中長期の取り組みであるべきです。障がいを持つ児童への支援であれば、小学校1年生から高校3年生まで12年の学習期間があります。それなのに1-2年で支援が途絶えれば、「打ち切られた」児童はどうすれば良いのでしょうか。これは海外の貧困や教育支援なども同様です。
さて、このように企業がCSR活動で協業したNPOを短期間で「切る」ような事態が頻発すると、さまざまなリスクが予想されます。
第一に、「切った」企業自身のリスクです。その企業への不信感が伝播し、社会からの信頼や「いいね!」を得て自らのソーシャル・ブランド価値を高めるという、企業のCSR活動の根幹が大きく揺らぎかねません。
上司が変わったから、方針が変わったからといって、NPOや市民社会との関係をリセットするようなことでは、その企業への信頼自体も大きく損なわれかねません。
第二のリスクは、NPO側が支援を打ち切られることを恐れ、ますます企業に対してモノが言えなくなることです。「協働=パートナーシップ」とは、あくまで対等の関係です。双方が健全な意見や、応分の労力を出し合って初めて成立するのです。
グローバル企業を堂々と批判する海外のNGO/NPOに比べて、日本のNPOは、総じて企業に対しておとなしいのが実情です。その背景には、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください