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 牛丼チェーン「すき家」が人手不足から開店できなくなっている。リストラや就職難が騒がれていた状況から店を閉じざるを得ない人手不足へ、という急転直下ぶりに、驚きの声も上がっている。

 原因として挙げられているのは、生産年齢人口の減少とアベノミクスの相乗効果だ。15歳から64歳までの働ける人の数(生産年齢人口)が昨年、32年ぶりに8000万人を割り込み、そこへアベノミクスによる景気回復ムードがぶつかる形で急激な人手不足を招いたというものだ。

 だが、「すき家」や「ワタミ」などに見られる「店を開けない事態」の背景には、こうした基礎条件の変化だけでなく、働き手の求める働き方と企業が提供する働きかせ方の大幅な乖離と、これを顕在化させたブラック企業批判の高まりがある。

まともな企業選別意識の復活

 デフレ経済の中、企業は、雇用の規制緩和で生まれた大量の非正社員の活用や正社員の長時間労働による人件費削減で利益を確保する「賃下げ依存症」のビジネスモデルを続けてきた。中でも、外食産業を中心にした小売業は、従業員の労働強化と低賃金による「安さ」を売り物にした経営が目立った。

 たとえば、居酒屋チェーンの「ワタミフードサービス」では、20代の女性社員が過労死認定基準を超える長時間労働の末、入社2カ月で自殺。これが労働災害と認められ、昨年は「ブラック企業大賞」も受賞している。

 「すき家」も、店員がたったひとりで店を回す「ワンオペ(ワンオペレーションの略)」による過重負担や、こうした店舗を狙った強盗事件の発生による危険性などが問題となった。そんな異様なビジネスモデルを支えてきたのが、「就職難だから、どんな労働条件でも耐えろ」「会社を選ぶのはわがまま」と教え込まれてきた若者たちだった。

 いま、店長以外ほとんどがバイトで、バイトが基幹労働力という職場は珍しくない。勤め先の大学で学生に授業内アンケートを行ったところ、副店長並みの仕事を最低賃金水準の時給で引き受けている学生や、店が必要な時にシフトに入ることを求められ、授業に出られない学生までいたる。それでも、学生の多くはやめられない。教育費への公的補助が絞られて学費が高騰し、同時に親の賃金も下がり、バイトはもはや「遊ぶカネ」のためのものではなく、生活がかかった労働だからだ。

 正社員もまた、

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筆者

竹信三恵子

竹信三恵子(たけのぶ・みえこ) ジャーナリスト、和光大学名誉教授

和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年、朝日新聞社に入社。水戸支局、東京本社経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から和光大学現代人間学部教授・ジャーナリスト。2019年4月から現職。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)、「女性を活用する国、しない国」(岩波ブックレット)、「ミボージン日記」(岩波書店)、「ルポ賃金差別」(ちくま新書)、「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書)、「家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの」(岩波新書)など。共著として「『全身○活時代~就活・婚活・保活の社会論』など。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。

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