2014年06月16日
今回の農協改革について、よく聞かれる質問がある。「なぜ今、農協改革なのか」という質問である。
私は、今回の政府や自民党の意思決定に直接的には関わっていない。また、関わっていたとしても、当事者の心の内を聞き出すことは難しい。しかし、長年農業の政治劇を見ていれば、かなりのことは理解できる。
まず、JA農協から分析しよう。
JA全中はあくまでJAの指導機関であり、政治活動を行えるとは、農協法のどこにも書いていない。そのJA全中が、医師会や生協などを巻き込んで、TPP反対運動を展開し、これが極めて強い政治的な影響力を発揮した。
民主党政権はTPP参加を決断できなかったし、安倍首相もオバマ大統領と会談し、例外がありうることを確認して、ようやく交渉参加にこぎつけることができた。60年代の米価闘争を彷彿させるような活動だった。JAは、その政治力を見せつけた。
他方で、農家戸数が大きく減少し、JA農協の集票力が落ちていることは事実である。1980年には、農業出身の候補者は参議院全国区で230万票を獲得していた。それが今では34万票しか集められない。
しかし、衆議院選挙では小選挙区制、参議院地方区でも農村の多い地域では一人選挙区となっており、農協の集票力が落ちた今も、3%程度の農協票が相手陣営に行くと、相手候補との間で6%の差が開いてしまう。これに地方選出議員は怯える。
JAは、先の衆議院選挙ではTPP参加反対、TPP参加後の参議院選挙では農産物5品目のTPP交渉からの除外(関税はびた一文も下げさせない)という主張を実現しようと、候補者に踏み絵を踏ませた。JAが対立候補を支持した山形県の参議院選挙では、自民党候補は得票率3%の差で、かろうじて勝つことができた。
これに対して、安倍政権にとっては、JAの政治力を削ぎたいという事情がある。内外の機関投資家から、農業やTPPは安倍政権が推進する第三の矢の試金石または最重要課題だと見られている。JAのおかげで農業改革やTPP交渉が進まないとなると、
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