2014年06月20日
労働時間にかかわりなく成果で賃金が決まる「新しい労働時間制度」(残業代ゼロ制度)の対象要件を「年収1000万円以上で職務の範囲が明確で高い職業能力を持つ人」とすることで11日、関係閣僚が合意した。
当初、産業競争力会議メンバー、長谷川閑史・武田薬品工業社長の提言書では、「本人の希望にもとづく」を条件に、年収1000万円以上の働き手を対象にする「B型(高収入・ハイパフォーマー型)」と、労使合意や本人同意があり、国の年間労働時間を上限に「職務経験が浅い者」以外の社員を対象とする「A型(労働時間上限要件型)」が提案されていた。だが、今回の合意では「A型」が消え、「B型」を基本に職務の範囲や職業能力による限定を加えた形になった。
理由は、なんといっても「A型」の衝撃力の大きさだろう。年収要件がないため、一般の働き手が「明日はわが身」と感じるようになり、主婦層が読者といわれる『女性セブン』(6月26日号)までが、「天下の悪法を許すな! 年収3分の2、休日ゼロ、そのとき暮らしはどうなる?~夫の残業代が0円になる日」という記事を掲載するほどの反響を呼んだ。
だが、危ないのはむしろ、今回の合意だ。800万円くらいなら多少は身近に感じる人々も、「1000万円」となると、雲の上の人のこと、と一気に距離感が広がる。「1000万円」の数字の魔力だ。11日の衆議院厚生労働委員会でのやりとりは、そのトリックを浮かび上がらせている。
ここでは民主党の山井和則議員が「年収要件が1000万円以上との議論があるが3年、5年後も変わらないのか」と質問。これに対し、田村憲久厚労相が「(年収要件が)絶対に動かないとは言えない」と答弁した。残業代ゼロ制度が盛り込まれる「成長戦略」の元締めである日本経済再生総合事務局次長からも、「年収要件の額を法律に書き込まず、政省令で対応すれば、国会を通さず額を引き下げていくことはできる」と答弁があり、1000万円とされた年収要件が、今後、限りなく引き下げられる事態がありえないわけではないことが見えてきた。
この質疑では、1000万円の年収要件の働き手は全体の3・8%にすぎず、大半が管理職であることもわかった。現行制度では、
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