2014年06月21日
ブルームバーグ・ニュースが6月5日、「スウェーデンの大蔵大臣、アンダーズ・ボルグ氏が、スウェーデン中央銀行(通称“リクスバンク”)のインフレ目標に関するパフォーマンスについて、中央銀行から独立した監視委員会の設立を検討しているようだ」と報道している。そして、そもそもこういう話が持ち上がったきっかけは、ポール・クルーグマンがニューヨーク・タイムズに4月に書いたリクスバンクを厳しく批判した論説である、という。
(“Krugman’s Condemnation of Sweden Triggers Riksbank Review Talk” by Johan Carlstrom, Bloomberg News, June 5, 2014)
クルーグマンは、このブルームバーグの指摘する論説で、「スウェーデン中央銀行の金融政策スタンスは、まるで以前の日銀そっくりであり、スウェーデンは今やデフレの淵に立っている」と、その金融政策を激しく批判している。
(“Sweden Turns Japanese” by Paul Krugman, New York Times, April 20, 2014)
クルーグマンのリクスバンク批判は、以下のように整理できる。
(1)2010年までのスウェーデン経済は、2008年金融危機からの回復過程で、先進国の中でも最も優れたパフォーマンスを実現していた。
(2)ところが、2010年、リクスバンクは未だ失業率が高くインフレは目標値(2%)を下回っているにもかかわらず、金融引き締めに乗り出した。
(3)金融引き締めと同時に、失業率は低下しなくなった。そして今や、スウェーデンはデフレに陥る瀬戸際にいる。
(4)2010年に金融引き締めに入ったときには、リクスバンクはその理由を「将来のインフレに備えて」と説明していた。ところが、その後インフレ率が低下傾向をたどると、「住宅バブルを未然に防止するのだ」と説明を変えた。同じ政策をまったく異なるロジックで正当化している。
スウェーデンのインフレ率、失業率と実質GDP成長率の推移をユーロ通貨圏およびイギリスと比較したのが、下記の表である。
この表の実質GDP成長率の推移を見ると、2008年秋の金融危機によって、2009年に景気が大きく落ち込んだのは、スウェーデンも他の先進国と変わりがないが、2010年には著しい回復を遂げている。この点が、その後のユーロ危機で景気回復が叶わなかったユーロ通貨圏や当時インフレに悩まされていたイギリスと大きく異なるところだ。実際、2010年の年率6.6%という実質GDP成長率は、
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