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若者の心をつかむヴァイス・メディア

茂木崇 ニューヨーク・メディア文化研究者

 ここまで好き嫌いがはっきり分かれるメディアも珍しい。熱狂的なファンもいれば、とてもついていけないという人もいる。若者の心をつかんで急成長中のヴァイス・メディアのことである。

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 本稿では、日本のメディア・ウォッチャーがまだほとんど注目していないヴァイス・メディアについて述べてみたい。

 ヴァイス・メディアはニューヨーク、ブルックリンのウィリアムズバーグに本社を構えている。そもそもは1994年にフリーペーパーを発行したことが始まりだ。現在はフリーペーパーの発行を継続しながら、ネット向けのビデオコンテンツの製作・流通をメーンに展開。売上の大半はスポンサードコンテンツだ。世界35カ国にオフィスを展開し、4000人のスタッフを抱えている。

 ヴァイス・メディアのテイストは誰にでもついていけるものではない。アメリカ版のサイト(http://www.vice.com/en_us)を見ると、「あなたの父親よりも年上のゲイの小説家とデートする方法」「ワールドカップでの政治的な落書き」「ペニスの移植」といった見出しの記事やビデオが並ぶ。「ヴァイス(悪)」と名乗るだけのことはある。

 日本版のサイト(http://jp.vice.com)も展開している。アメリカ版と比較すると、共通の記事もあれば日本版独自の記事もあるが、アメリカ版より日本版のほうが上品な路線のようである。

 とにかく、アメリカ版を中心に大人気である。展開する全サイトでは、2億2千万ユニークユーザー、5億の月間ビデオビューを誇る。オーディエンスの内訳をみると、性別では、男性が64%、女性が36%。年齢では、18~24歳が35%、25~34歳が41%、35~44歳が24%となっている。若い男性に圧倒的な支持を受けていることが分かる。

 GE、NIKE、ロレアルといった錚々たる企業が、

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