2014年06月30日
新しい成長戦略「日本再興戦略」が24日、閣議決定された。ここでは「女性の活躍促進と働き方改革」が二番目の高い位置に掲げられ、同日の記者会見で安倍晋三首相は、「新しい成長戦略でも、岩盤のように固い規制や制度に果敢にチャレンジしました」(首相官邸ホームページ)と胸を張った。
だが、雇用などについての規制が「岩盤」となってきたのは理由がある。それは憲法25条で規定された「最低限の健康的・文化的な生活の保障」を支える基盤であり、これを崩すと働き手の生活そのものが崩れてしまいかねない人権基準だったからだ。
その一例が、「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応える、新たな労働時間制度」の創設、つまり残業代ゼロ制度だ。「成果」は企業の胸先三寸で決めることができる指標で、「成果」の水準を引き上げさえすれば際限なく働き手への負担を増やしていける。一方、労働時間規制はこれに枠をはめることができる客観基準だ。だからこそ、働き手の生活時間を守るための人権基準として「岩盤」ともいえる国際ルールとなってきた。
国際的な雇用ルールでは、働き手が安心して働けることを目指して無期雇用と勤め先の直接雇用も原則とされてきた。ところが、今回の再興戦略では、「行き過ぎた雇用維持型の政策から労働移動支援型の政策へと大胆な転換」が提唱された。こうした「労働移動支援型」政策のトップバッターは、解雇の規制緩和と派遣労働の恒常化だろう。
派遣労働は派遣会社と雇用契約を結んで別の派遣先企業で働く「間接雇用」だ。勤め先企業と労使交渉しようとしても、「うちの社員ではない」と扱われて基本的な労働権から排除されやすいため、例外的な雇用とされてきた。
ところが、今国会に提案された労働者派遣法改定案は、そんな派遣労働を恒常化させる内容だった。改定案は一応廃案にはなったものの、6月27日付日本経済新聞は、こうした派遣労働を正社員と同列の働き方として扱う方向で厚労省が職業安定法改正に入ると報じた。
紹介料の高い派遣を優先することを防ぎ、安定した正社員への転職を促すため、現在、民間人材紹介業には、二つの求人の紹介窓口を別にする規制が設けられている。これを撤廃し、ひとつの窓口で紹介できるようにするという。安定雇用の保障原則の放棄への姿勢転換といえる案だ。
「再興戦略」の「女性の活躍促進」では、「小一の壁」崩しも強調されている。小学校の放課後に子どもを預かる場がないため、母親働き続けられない「小一の壁」を解消するため、学童保育の定員を5年で30万人増やす構想だ。結構な話に思える。
だが、定員増は財政の裏打ちがなければ担い手の指導員たちの貧困化に直結する。大阪府のある自治体の小学校の学童保育クラブでは今年3月、
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