2014年07月08日
トヨタ自動車は6月25日、世界初の市販車となる燃料電池自動車「FCV」を発表した。日本では来年3月までに、欧米では2015年夏頃に発売を開始するという。販売価格はかつて1億円以上と言われた価格から、一般消費者の手の届く700万円程度に設定される方向にあり、補助金が加われば燃料電池車が従来のガソリン車の代わりとして現実的な選択肢にもなりうる水準に近づく。
水素の充塡時間はガソリンと同じ3分程度、航続距離は700kmと性能のバランスは申し分ない。しかし、現在の日本にはまだ限定的な水素ステーションしか存在していない。従って、当面の国内販売は水素ステーションの整備が予定されている地域かその周辺地域の販売が中心となる。実際、部品会社から漏れ伝わる当面の同車生産計画台数はごく少量から始まる見通しだ。
FCVが当たり前のように一般道を走行するにはまだまだ長い時間が必要であることは間違いない。今、この時点でなぜトヨタが世界に先駆けて「FCV」を世に問うのか、そのトヨタの狙い、FCVのミッションを考察してみたい。
トヨタのFCV導入には、
(1)「水素社会」構築に向けた社会コンセンサス形成
(2)水素供給インフラの構築の加速化
(3)国内加工型産業の未来を牽引できる次世代製品の育成
という大きく3つの狙いがあるだろう。
4月11日に閣議決定された第四次エネルギー政策では、エネルギー需給に関する長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策の中で、水素等の新たな二次エネルギー構造への変革を促し、水素を二次エネルギーに本格利用する水素社会の構築が国策の重要施策の一つとして掲げられた。
ところが、福島原発の水素爆発を目の当りにして、水素が怖いエネルギーという歪んだ認識が一般的にはびこっていることは否めない。実際には、水素は空気より軽く拡散性が高いことから、燃焼範囲が空気中4%~75%濃度と広くとも簡単に爆発するものではない。ガソリンや都市ガスと同じく、適切な保安規制によってメリットがリスクを上回ることが可能だ。
FCVはエネファーム(家庭用燃料電池コージェネ)に続き、水素エネルギー利用の嬉しさを体験する重要な機会を提供するだろう。水素を重要な二次エネルギーに推進する、いわゆる「水素社会」構築に向けた社会コンセンサス形成をも促す。水素は日本の社会の持続性と、産業の国際競争力を左右する重要な
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