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EUを揺るがす「民族大移動」、新たな震源地はあのウクライナ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 EUが移民問題で揺れている。この問題について尋ねると、多くの人は一瞬不機嫌な顔になる。英国ではエリザベス女王が議会で移民規制強化を表明し、フランスやドイツ、オーストリアでは移民排斥を主張する極右政党が躍進。スイス(EU非加盟)も2月の国民投票で移民規制を承認した。

EU外のウクライナ移民が急増

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 移民は医師やIT技術者のような高給取りから下積み労働者まで各層にわたる。従来多かったバルト3国やルーマニア、ブルガリアに加え、最近はEU外のウクライナ移民が急増している。

 筆者は6月末にハンガリー、チェコ、スロバキアを訪れ、移民が流出する東側の現状を取材した。

 ハンガリーの首都ブダペストとウィーンの間を一本の幹線道路が結んでいる(右の写真)。冷戦末期の1989年、その国境検問はハンガリーによって封鎖が解除され、ニュースを知った東ベルリン市民は車で一気に南下してハンガリーに入国。そこからこの道路を西側のウィーンに向けてひた走った。共産圏崩壊のきっかけになった道路である。

 その道路はいま中東欧の移民が西側に流れ込むルートになっている。それは「民族大移動」とも言えるほどの規模である。

人口減少が激しい中東欧諸国

 グラフ1は中東欧諸国の最近20年間(冷戦終結後~現在)の人口減少がいかに激しいかを示している。バルト3国は約20%、ブルガリア、クロアチア、ルーマニアは10~18%も減っている。

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 この急激な減り方は少子化では説明できないもので、高学歴層と若年層の流出が多いところから、明らかに貧困国から先進国へ、農業地帯から工業地帯へという大規模な人口移動が起きているのである。これら中東欧諸国での人口減少は合計で1000万人を上回る。

 中でもウクライナから大量の移民が流出している。人口は20年間で630万人(13%)も減少しており、いまや最大の「移民の母国」だ。EU非加盟国だが、正規の労働ビザがなくても難民扱いや隣国スロバキアの役人への賄賂、EU内のロシア人脈活用などあの手この手で西側へ流れ込んでくる。

 ウクライナの人口は5000万人と中東欧では突出して多い。政情が安定せず経済も悪いので、

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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