2014年07月31日
中国の習近平政権は7月29日、石油閥の実力者である周永康・前党政治局常務委員を汚職で捜査していることを公式発表した。
最高指導部メンバーの摘発によって国有企業の暗部にメスが入り、習政権が進めようとしている国有企業改革が勢いづくという期待がある。昨年11月の第18期三中全会決定では、国有企業の活動領域を抑制気味にし、「可能な限りできるだけ民間企業に開放する」との方針を示しているからだ。
反面、摘発が政治闘争と化していつものように権力強化に使われるだけに終わるという懸念もある。国有企業の多くは共産党の権力者とカネや人脈で複雑につながり、手の届かない「聖域」になっていて、改革は容易ではないからだ。
中国企業の研究が専門の渡邊真理子・学習院大学教授は「中国の国有企業政策は今が分水嶺にある。どちらに進むかは読みにくい」と見ている。
では、国有企業の弊害の実態とはどのようなものか。石油化学の生産過剰と大気汚染物質PM2.5の問題を入り口にして考察してみよう。ともに「元凶」は中国石油化工集団(シノペック)である。
中国の石油産業は、シノペックのほかに石油・天然ガスを開発する中国石油天然気集団(ペトロチャイナ)、海底油田の探査を行う中国海洋石油総公司があり、この3社で役割分担して利益を独占している。
シノペックは2008年のリーマンショック後の政府の景気刺激策(4兆元=56兆円を受けて一気に生産設備を増強した。下のグラフはポリエステル繊維の原料になるテレフタル酸の世界の需給バランスを示したものだ。
2013年は世界の需要量が5000万トンなのに対し、世界の供給能力は7000万トン以上あり、その約6割の4000万トンを中国が占めている。
需給を無視した過度な設備投資は値崩れを引き起こし、産業を疲弊させる。日本のある石油化学メーカートップのA氏は、最近、シノペック幹部にこの問題を問いただしたが、その答えを聞いて唖然とした。
「PM2・5の対策は国や北京主導でやるが、それは右手の話。左手は別で、
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