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「メイド・イン・ジャパン」依存の終焉

田中洋 中央大学ビジネススクール教授

COO効果とは何か

 ある研究会で先日、化粧品会社の国際部門のトップの方のお話を聞く機会を得た。お話によれば「メイド・イン・ジャパン」の「ご威光」が10年前に比べて低下しているというのだ。何をもって低下していると言えるのか、おそらく彼の実体験によるものだと思われるので、数値による裏付けは取れていない。しかしA氏の言うことは私なりにも理解できるような気がする。

サマンサタバサの表参道GATES店。若い女性たちに人気の製品はCOOを超えたブランド力をもつ拡大サマンサタバサの表参道GATES店。若い女性たちに人気の製品はCOOを超えたブランド力をもつ

 「メイド・イン・XX」という産地国を表す商品の表示が消費者の購買意思決定にもたらす効果のことを「COO(=Country Of Origin)」効果と呼んでいる。私たちは、フランス製ワインとか、イタリア製ファッションとか、ドイツ製高級車などの表示にポジティブ(場合によってはネガティブ)に反応する傾向がある。こうしたCOO効果はマーケティング研究において確認され、また実際にも活用されている。

 このCOO効果についてはマーケティング研究で多くの研究結果が蓄積されているが、この研究の初期に貢献したのはある日本人のビジネスマンだったことは知られていない。ナガシマ氏というビジネスマンが1970年代に行ったCOO効果の研究はJournal of Marketingという権威ある研究雑誌に掲載され、今でも引用されている。

 彼は日本とアメリカのビジネスパーソンにいくつかの商品について産地国をつけて尋ね、日本と米国では産地国表示の効果が異なること、また時間をおいてその効果が変化することを実証的に示した。このナガシマ氏がどのような人物だったかは定かでないが、70年代にマーケティングの国際的な貢献を果たした人物であったことは間違いない。

COOはオールマイティではない

 さて、問題は「メイド・イン・ジャパン」という表示をどのように活用するのか、という問題だ。メイド・イン・ジャパンは60年代くらいまでは、諸外国では品質の悪いことの代名詞であった。しかし70年代から80年代になり、日本製のAV機器や自動車が米国の生活に浸透するにつれて、メイド・イン・ジャパンの意味するところは大きくポジティブな方向へと変化した。

 メイド・イン・ジャパンが今日意味しているところはおおよそ次のようなものだろう。品質が高い、壊れにくい、ウソがない、デザインが良い、使いやすくつくられている、などだ。こうした属性評価は悪いことではむろんない。しかし問題は何かと言えば、日本企業は競争のなかで、こうしたメイド・イン・ジャパンの高い評価に満足していられないことだ。

 もともとCOOが有効なのは、

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筆者

田中洋

田中洋(たなか・ひろし) 中央大学ビジネススクール教授

中央大学ビジネススクール教授。1951年名古屋市生まれ。マーケティング論専攻。京都大学博士(経済学)。電通で21年間実務を経験して後、法政大学経営学部教授、コロンビア大学研究員などを経て現職。社会人のための夜間・土日開講のビジネススクールでマーケティング論の教鞭を執る。日本マーケティング学会副会長。著書に『ブランド戦略・ケースブック』、『マーケティング・リサーチ入門』など、これまでに14冊を数える。日本広告学会賞、日本マーケティング学会ベストペーパー賞、東京広告協会白川忍賞などを受賞。多くの企業に対して戦略アドバイスや社内研修を行う。翻訳サービスの言コーポレーション(株)顧問。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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