2014年08月16日
アラブの春によって民主主義革命が起こり、これらの国は平和になり、人々は幸福になるはずだった。ところが、そうはなっていない。自由民主主義は、むしろ混乱をもたらすものではないかと考える人たちすら現れている。
混乱は、実は民主主義の政体を構想していた人々によって、すでに予想されていた。民主主義は自由な選挙によって自分たちの指導者を選ぶ制度である。しかし、それだけと考えれば、むしろ混乱を招きかねない。自由な選挙によって、民衆の多数が少数に対して、特定の宗教やイデオロギーを押し付ける指導者を選べば、混乱の原因となる。
アメリカ独立革命の指導者は、造物主(神と言わないのは、様々な神の解釈によって対立した宗教戦争の記憶があったからである)が人民に与えた権利を、人間である王が奪ったのは不正義であるという論理で、自らの反乱を正当化した(この思想は欧米の政治思想家たちの長い思索の結果生まれたものだが、合衆国建国の父たちのものとして簡単に説明する)。王に対する反乱は大逆であるが、造物主が人間に与えたものを奪おうとした王は造物主に対する大逆を犯しているのであるから、自分たちの反乱は大逆ではなく正当な権利の行使となる。
では、造物主が人間に与えた権利とは何か。権利章典と呼ばれる合衆国憲法修正条項10か条であり、信教・言論・出版・集会の自由、合理性のない捜索、逮捕、押収の禁止、財産権の保障、刑事上の人権保障、残虐で異常な刑罰の禁止などである。なお、アメリカで銃の所有の自由の根拠となっている人民の武装権もこの中に入っている。これらは、造物主が与えた権利であるから、人間が変えてはならないものである(だから、銃の規制も難しい)。
明治の日本人は、驚くべきことに、民主主義における権利章典の意味をすぐさま理解した。造物主が人間に与えた権利を、天賦人権と訳した。天の与えたものは、
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