2014年08月26日
以上の抜粋は、ジョン・メイナード・ケインズのThe General Theory of Employment, Interest and Moneyの第383ページ目(同書本文最終ページから第2ページ目)に出て来る『有名』な文節である。
現在の日本や、米国、ユーロ圏などの先進経済圏とされる地域の政治経済指導層には、依然として大きな意味がある文章である。
実際に原文で読む機会は極めて少ないと思われるので、あえて引用させていただいた。
日本経済は、様々な側面では八方塞がりの状況であるかのように見えるが、それに対処する方策も様々に有り得るというのが、筆者が本シリーズで断片的ではあるが示してきたところだ。 しかし、政治指導者が、現状を不適切に把握し、大真面目に見当違いの政策・方策を繰り出せば、国民は塗炭な苦しみの中に落とされる。そんな政治指導者は、厳しい言葉であるが、「狂人」にも比較されるというのが、上掲のケインズの抜粋の趣旨だろう。
今回は、三つの内容をグラフ化して眺め、その意味することを概観してみよう。
第1に、今月に公表された今年第2四半期までの日本経済の国内総生産(GDP)のデータを、1人当たりの額に変換して、1980年以降の推移を眺めてみよう。実際の金額の経常価格評価(名目GDP)と、2005年基準連鎖価格評価(実質GDP)の双方の1980年以降の推移を眺める。
第2に、同じ先進経済圏にあるとされる米国、ドイツ、スウェーデンの1人当たりGDPを、年々の円・ドル為替レート、ドル・ユーロ為替レートを使って米ドルに換算して、同じく1980年以降の日本の推移と比較する。ドイツに関しては、東西ドイツ統一後の1991年以降のGDP、ユーロ発足前の1998年以前のドル・ユーロ為替レートに関しては、ドル・ECU(欧州通貨単位)為替レートを使う。
第3に、日本と米国のドル換算の1人当たりGDPと、実際の円・ドル為替レート、日本と米国の1人当たりのGDPを均等にする理論的な為替レート(日米均等化為替レート)の推移を対比する。
第1のグラフを眺めると、日本の1人当たり名目GDPは、前回に消費税率が引き上げられた1997年の415万円がピークで、2014年第2四半期には383万円(年率換算)と、32万円も減少し、一般には好況であったとされる「小泉改革期」でも、390万円台で低迷していた様相が浮かび上がる。
しかし、1人当たり実質GDPは、1997年の376万円から1999年に367万円に低下した後は、2008年のリーマンショック後に一時的に低下しただけで、2014年の414万円へと、緩慢ながらも増加傾向を示している。
1人当たりの実質的GDPが、緩慢ながらも着実に上昇して来たならば、所得分配の平等性が高ければ、大多数の国民の実質的な生活水準も向上していたはずである。しかし、家計調査、実質賃金指数などの他の経済指標の推移では、全く逆の傾向が見えることは、日本社会内の所得分配の不平等度が高まっていることを示唆して
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