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プラント事故はなぜ後を絶たないのか

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 今月3日、新日鉄住金名古屋製鉄所で石炭プラントの爆発事故が起きた。同じ製鉄所で事故は今年5回目という異常さだ。化学会社でも相次いでおり、2011年に東ソーで、12年には三井化学と日本触媒、14年には三菱マテリアルで爆発火災事故が発生している(下の表)。

 プラントにはいくつもの法律で安全規制がかかっており、当局による査察も頻繁に行われている。それなのに事故発生は収まる気配がない。事故は経営の打撃になるだけでなく、サプライチェーンを通じてその製品に頼る産業界全体に計りしれない影響を及ぼす。

 事故のたびに指摘される論点の一つは、「ベテランから若い世代への技術の伝承がスムーズにいっていない」というものである。筆者が取材した東ソー南陽事業所(山口県周南市)では、現場は技術伝承に深刻に悩み、様々な工夫を凝らして克服しようとしていた。しかし、それ以上に大きな構造的な問題があり、解決はなかなか容易ではないというのが筆者の実感だ。

 それは第一にプラントオペレーターの年齢構成のいびつさである。プラントオペレーターとはプラントを運転して多様な製品群を生み出し、ときに点検修理をし、生産効率を高める工夫もする社員たちのことだ。

 東ソーでは全社員の約30%に当たる800人がこの職種だが、世代別では50歳代社員と60歳代のシニア社員が大半を占め、40代と30代の中堅層が極端に少なく、残り少数が20代。他の化学企業もほぼ同じような世代構成になっている。

 なぜ、こんなことになったのか。石油化学の勃興期だった1970年前後、各社は高卒のオペレーターを大量採用しており、この人たちが今50~60歳代のピークを形成する。

 その後、2回の石油危機(73年、79年)と円高不況などがあり、新規採用を急速に絞ったせいで40代が極めて少なくなった。1990年代もバブル崩壊で採用を抑制したので30代もごく少ない。ようやく新人採用を復活したのは

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