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 「アベノミクス」は最近、海外のマスコミの論評子にも散々に酷評されている。その代表格は先月の8月28日付のロンドンのフィナンシャル・タイムズ紙の社説だろう。安倍首相が1年余り前に掲げた看板通りの結果が出ていないとこき下ろしている。

 その上で、同紙の社説子の安倍首相・日本政府に対する注文も手厳しい。骨格は以下のようなものだ。

 1.黒田総裁・日本銀行はもっと積極的に御札を刷れ(量的緩和政策を拡大せよ)

 2.安倍首相は、財務省に正面から向き合い、8%から10%への再度の引き上げは延期せよ、去る4月の消費税率の5%から8%への引き上げは、勇敢(brave)ではあったが、無謀(foolhardy)だった

 3.日本では非正規労働者が全労働者の40%近くにもなっている。最低賃金の引き上げなどで非正規労働者の賃金を引き上げて、正規労働者と非正規労働者の格差を縮小せよ、

 4.安倍首相は、アベノミクスの成功は(政治的な)安定次第で、(経済)政策に集中するために、平和憲法の解釈を変えるなどの政治闘争にかまけて、貴重な政治的資本を浪費するな

 以上をみると、安倍首相・日本政府に対して、手取り、足取りの助言を書いているといった印象だ。

 注目されるのは、産業革命以来の近代資本主義の首都ロンドンに座し、資本主義のチャンピオンであるはずのフィナンシャル・タイムズ紙の社説子までが、かつては「一億総中流」などの看板で、先進経済圏の中で経済的平等度が格段に高いとされていた日本社会も、労働者が分断されて経済階級が出現していることを指摘。その是正策まで書かざるを得なくなっているという事実である。

 翻って見れば、産業革命前の農業主体の経済では、農村共同体は、経済格差の拡大を抑制して経済的平等度の高い社会、共同体構成員の経済的安全保障を確保する役割を果たしていたと言える。それを支えた原則は、土地などの所有権に関しても、共同体が個人に優先するということであった。

 しかし、産業革命の進展と共に、農村共同体の解体も進み、農村共同体が持っていた経済的平等度の高い社会、共同体構成員の経済的安全保障を確保する役割も失われていった。そこには、共同体的所有権の否定と、個人の私的所有権の絶対化があったといえる。

 産業革命開始以降の先進経済圏の歴史は、産業革命・資本主義市場経済化の進展で崩壊した共同体を、新たな形の共同体として再建しようとの動きと、 ・・・ログインして読む
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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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