2014年09月10日
アベノミックスの成長戦略、いわゆる「第3の矢」のなかに今年6月、国民年金と厚生年金の積立金、合計約130兆円を運用するGPIF(年金積立金管理運用基金独立行政法人)の運用方針の見直しが入った。
これまで、この約130兆円の積立金は、国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、現金5%、という比率で運用されてきたが、国内債券の比率を40%に落として国内株式と外国株式を各々20%にまで高める、というのが、今回提案されている大まかな運用方針の変更である。要するに、債券(主に国債)への配分を減らして、株式、つまりリスク資産の運用を増やす、という話である。
公的年金のための積立金で、株式のようなリスク商品に投資すべきなのか否かについては、もちろん、賛否両論がある。
WEBRONZAでも朝日新聞の松浦新氏が、公的資金の運用見直しに関する有識者会議で座長をつとめ、このリスク資産の比率を増やすという提言をまとめた伊藤隆敏・政策研究大学院大学教授と、この見直しに反対の立場の田中秀明・明治大学教授にインタビューを行っている。以下を参照してほしい。
・「国の年金積立金は株式運用を増やしても大丈夫なのか?政策研究大学院大学の伊藤隆敏教授に聞く」(8月7日)
・「年金積立金の株式運用「失敗したら給付が減る」という国民の合意が必要だ-明治大学田中秀明教授インタビュー」(8月21日)
私は、一般論として、長期の資金運用である年金積立金の運用において、株式のようなリスク資産を持つことに反対ではない。だが、反対派の田中教授のインタビューを読んで、非常に気になったところがある。それは、「公的年金に許容されるリスク、つまり(予定)運用利回りは、年金数理に基づく将来推計において所得代替率50%を維持することを前提に逆算された数字である」という田中教授の発言である。
「所得代替率」というのは、現役勤労者の賃金所得に対して、高齢者の受け取り年金額が何%になっているかという比率のことで、現在、これに50%の下限が設定されている。しかし、長期的には、人口減少社会の日本で勤労者が減り高齢者が増え続けるのは確実なので、この比率の維持は常識的に考えて難しい。
そもそも、なぜこの比率にこだわるのかがよく分からないのだが、それはともかく、この数字を維持するためにはこれぐらいの利回りが欲しいという「願望」を、年金積立金の予定運用利回りにしたのでは、リスク許容度を非常に高く設定せざるをえないのではないだろうか。これが田中教授の発言から、
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