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「地方消滅」、目の前の現実を直視せよ

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 2011年26万人、2012年28万人、2013年22万人。日本の直近3年の人口減少数だ(総務省人口推計)。20万人を超えている。

 人口20万人台の都市名をあげると、東京23区では、目黒区、豊島区、文京区、港区、渋谷区、県庁所在地(それぞれの地元では県都とも呼ばれる)では、青森市、岩手県盛岡市、山形市、福島市、茨城県水戸市、福井市、三重県津市、島根県松江市、徳島市、佐賀市が含まれる(2010年国勢調査)。このような都市に暮らす人の数に相当する人口がすでに毎年、消滅しているのだ。

 来年は終戦70年。戦後の人口増大を支えた団塊の世代(1947年から1949年生まれ)はサラリーマンならすでに定年や嘱託期間を終え、やがて、経営やものづくり、そして農業、水産業、林業などの第一線から退いていく。大きな世代交代の時期だ。その影響は、地方から顕在化している。

 地方を中心とする人口減少は周知の事実だが、税金や年金、健康保険料などを含めた国民負担と給付の問題から、各地自治体のあり方、議員定数などの見直しという課題が山積している。総論では賛成でも、各論では反対が相次ぐことが予想され、合意形成に時間がかかる課題ばかりである。

「地方消滅」を提起した増田・元岩手県知事

 こうしたなか、自治体の半分が消滅する可能性という衝撃的な可能性に言及した書籍がベストセラーになった。『地方消滅』(中央公論新社)だ。増田寛也氏(元総務大臣、元岩手県知事)が編著者。もともとは、同社刊の『中央公論』2013年12月号、2014年6月号などに掲載された、増田氏らの論考や座談会がベースになっている(表1)。

 とりわけ、同氏を座長とする日本創成会議が5月に発表した市町村別人口推計が地方自治体に衝撃を与えた。日本創生会議の人口推計は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計(日本の将来推計人口の中位推計)における2010から2015年までの間の人口移動の状況がおおむねそのままの水準(概ね毎年6~8万人程度が大都市圏に流入)で続くという想定で算出したものだ。

 それによると、2010年から2040年までの間に「20~39歳の女性人口」(出産可能世代との位置づけ)が当初の5割以下に減少する市区町村数は、896自治体、つまり自治体全体の49.8%にものぼる結果となっている。同書では、896自治体を「消滅可能性都市」とした。さらに、2040年に人口1万人未満(推計)、523自治体を「消滅可能性が高い」都市と呼んでいる。

 2040年は戦後95年にあたる。概ね30年先の日本について、市町村レベルの人口推計、つまり地域別に人口の減少ぶりを伝えることで、分かりやすい警鐘を鳴らした

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