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昭和恐慌期のリフレ政策で賃金は低下したのか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 大胆な金融緩和、リフレ政策で経済が好転しているが、物価が上がっても賃金が上がらなければ国民生活は苦しくなるばかりだという批判の声は絶えなかった。これに対して、私は、一人当たりの賃金は上がらなくても、雇用が増えて、すべての人が得ている賃金(平均賃金×雇用者数)は上昇していると指摘してきた。ところが、本年4月以降、賃金も上がり出したので、さすがにこの批判も収まってきた。

 もちろん、消費税増税のお陰で実質賃金は低下しているが、これはリフレ政策のせいではない。リフレ政策を採ろうが採るまいが、消費税を上げればその分、物価が上がって、実質賃金が低下するのは、税金を上げたのだから当然のことだ。

 ところが、高橋是清蔵相の大胆な金融緩和で、1930年の昭和恐慌から抜け出した日本で、実質賃金が低下して、国民生活は苦しくなっていたという批判が現れた。金融緩和政策に反対するために、次々と繰り出す議論にはあきれるばかりだが、本当にそうなのだろうか。

 は、昭和恐慌期前後の名目賃金(名目実収賃金)、実質賃金(実質実収賃金)、物価指数(東京小売物価指数)、労働人員を、1926年を100とする指数で示している。ここで、実質実収賃金とは、現在の現金給与総額(残業、ボーナスを含む)に近い概念である名目実収賃金を東京小売物価指数で除したものである。

 確かに、に見るように、

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