ソニー、パナソニックに続き、日立製作所も年功序列賃金廃止を打ち出して話題となっている(同社の場合は当面管理職のみ)。日本を代表する大手企業の相次ぐ年功給廃止は本格的な終身雇用時代の終焉を感じさせる。早くからその廃止を訴えてきた筆者としても感慨深い。いい機会なので、論点を簡単にまとめておきたい。
電機産業で相次ぐ意味は
年功序列制度は、勤続年数に応じて賃金を支払うことで、勤続年数を長く引き揚げ、スキルを組織内に蓄積できるというメリットがある。ただ、そのためには、そうやって蓄積されるスキルが本当にビジネスの第一線で戦力になっていることが大前提だ。役に立たないノウハウを後生大事に抱え続ければ、人件費をドブに捨てるようなものだし、組織としての意思決定すら危うくなる。
そういう意味では、冒頭にあげた企業がすべて電機であるという事実はとても興味深い。電機は新興国にキャッチアップされる中、ipodやiphoneのような革新的製品も生み出せず、ずるずると地盤沈下し続けている業種だ。ノウハウの蓄積より、組織としての新陳代謝を重視する方向にようやく舵を切った、ということだろう。
事実上の終身雇用制度の終焉
ひょっとすると、多くの人はこれらの改革を「単なる年功序列制度の廃止であり、終身雇用自体にメスを入れるものではない」と考えているかもしれない。だが、遅かれ早かれ終身雇用自体も形骸化することになる。
従来の終身雇用制度というものは「60歳まで雇い続ける雇用契約」を結んでいたわけではない。毎年少しずつ昇給し、
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