2014年10月09日
日立製作所の年功賃金廃止が話題になっている。これまで国内の管理職の賃金の一定割合は勤続年数に応じたものだったが、今後はこの部分を廃止し、どのポストについているか、成果はどの程度か、で決めることにしたという。
歩調を合わせるように、この発表から3日後に開かれた「政労使会議」でも、年功賃金廃止がテーマとして出された。日立を切り込み隊長として、日本の賃金から年功部分を廃止していく流れが作り出されようとしていることをうかがわせる。
だが、年功賃金廃止の拡大は、日本の働き手たちに思わぬ落とし穴をもたらしかねない。それは、会社の意向に左右されない賃金評価の方法が、ばっさりと削り落とされることを意味しているからだ。
日立の年功賃金廃止に対する発表後の巷の評判は、おおむね廃止に好意的だ。勤続年数が長ければ賃金が上がるという点に、若い世代や、出産退職などでキャリアを中断させられがちだった女性などの不満が強いからだ。
確かに年功賃金は、「長く勤めていることだけが取り柄の無駄飯食い社員」への優遇策と見られがちだ。だが、これは、一種の熟練賃金でもある。新卒社員は、働き始めたときは右も左もわからず、しばらくして職場に慣れ、ようやく独自の工夫などができるようになる。日立方式は、その部分を考慮して管理職以外の働き手には勤続給部分を認めている。だが、働き手はそれ以上になっても経験を積むことにより、それなりに技能が向上していく。その力を評価するのが勤続給だ。
米国では、これを先任権(シニオリティ)と呼び、職場に先に入り、勤続年数が長い者ほど解雇の順位が後になるなどの優遇策が設けられている。日本の年功序列は、勤続年数だけでなく、儒教の「長幼の序」を加味した年齢の要素が加わると言われているが、それでも若手男性社員から承認されてきたのは、定年までの雇用保証が一般的だったため、「いつかは自分も順番が回ってくる」と若手が思うことができたからだ。
だが、リストラが珍しいものでなくなったいま、若手にとっては、これはただの不公平でしかなくなった。また、出産などでいったんやめざるを得ないことが多い女性社員や、
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