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第3回 森信茂樹・中央大法科大学院教授(下) 給付付き税額控除で勤労意欲の後押しを

大鹿靖明 ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

 ――増税して財政再建に役立ちそうですか。

森信茂樹・中央大法科大学院教授森信茂樹・中央大法科大学院教授

 結局その点です。何のための増税か、と。来年度予算は税収が増えるということで、すでに100兆円の予算要求になっている。それこそ何のための増税なのか、となる。安倍政権の最大の課題はそこです。総理が強力なリーダーシップを発揮しないと、税収は増えたけれど歳出も増えましたとなる。この点、財務省も増税のためには何でもやるというメンタリティーが見え隠れする。

 注目すべきは消費税率を10%に決める際の補正予算です。不要不急の公共事業をたくさん盛り込んだり、「地方創生」を御旗に地方にばらまいたりしたら、いったい何のために増税したのだろう、となりますよ。社会保障改革をきちっとやって、世界に公約している財政目標を達成していく姿勢を見せないと、投機筋からだけではなく国民からもそっぽを向かれることになる。

 ――そうなりそうでは?

 歳出改革を極限まで推し進めて「もう参った」と国民が言うぐらいまでやって初めて、10%後の増税が課題になる。小泉首相は、そのような考えを持っていました。歳出改革をやっていけば、国民の方が増税の方がマシ、と言ってくるということをおっしゃっていた。消費税率10%までに引き上げた後は、当分歳出削減の時代にすべきです。

 ――結局痛みを伴う改革はやりたがらず、全部使っちゃおうというふうになりませんかね。

 重要なことは、国民が借金の多さに危機感を持って、政府が財政目標を守れるかどうか監視することです。このままではプライマリーバランスを2015年度までに半減するという目標すら達成できない。そうなると投機マネーが隙をついてきますよ。下手すると金利急騰。そうなったらパンクです。

 いま利払いが0・6%でなんとかもっているけれど、GDPの2倍の借金残高があるわけで、金利が1%上がっただけですぐ1兆、2兆円の歳出拡大になる。金利がもっと上がってくれば、

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